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2009年4月 アーカイブ

2009年4月29日

カラス

その日は

からすが多くて、

カアーッカアーッカアーッ、数は増えている気がした。

気になってブラインドを薄めに開けて見ると

南の空から1羽、また2羽、

カラスが我家を目指して飛んでくる。

ヒッチコックの鳥?

カラスに狙われている?

窓から離れられなくなり、早々と塾に行く夫に不安で

「カラスが多いの」

「ブタものじゃネイか」

ここいらでは生ものをブタのものというが、

そっか、今日はごみ収集の日、

我家の前のごみ置き場を漁るつもり?

生ごみは山のようにある。

それなら地域の住民とすれば、なんとか阻止せねば・・

夫は察知して外に出て、ごみ置き場に陣取ってしばらく警戒したが

カラスは降りない。

ごみ置き場の真上の電線に小カラス2羽、おいて2羽、

隣の大家さんのビルに3羽、

隣の柿の木に4羽・・

計11羽、やはり多い。

・・さらに南の空から1羽、また2羽、

さらに来る、来る、2羽、1羽、2羽、

また飛んできた、1羽、また1羽、

ごみ置き場を囲むように止まる。

この割で飛んできたとしたら

50羽、

あれよあれよと、

100羽になったら、私はどこに連絡したらいいのだろうか?

警察?市役所?保健所?いやいや、大家さんに報告して町内会長の指示を仰ぐべきか・

事態は悪化してこのあたりがからすに占拠されたら報道陣も来るだろうか。

我家がテレビの画面に大写しになったりして

どうしよう。

「大挙してお越しということは

それだけえさに困っておられるのでしょうか」

なにやら隣同士の話に夢中のからすはこちらを向かない。

しばらく、夫はごみ置き場にいたが、空を見上げ、降りそうもないと思ったのか、塾に行ったが、状況はさらに数を増やし、夫がいなくなって

認めるからすは

あと、2羽やってきて23羽、

カーッカーッ、23羽もの鳴き声は怖い。

烏合の衆が、頭の上をあっちこっちと黒く飛び交うのも不安。

隣の柿の木にじっと状況を見ている1羽のからすの横顔が目に留まった。

からす天狗みたいな高い鼻で、ひときわ大きい。

目尺で40センチもありそうなカラスが柿木の中枝に動きもせずにいた。

親分ですか。

「生ごみにつんつん、忍び込むカラスさんに

おはようございます。ここはよしたほうがいいです。言いましたが・・・

あっちいけ!とは一度も言ったことはありませんです。でも、

何か、気に障ることでもありましたか」

大カラスも仲間が来る南の空を向いて私など見もしない。

  突然、ごみ清掃車の定番の草競馬・・・

チャンチャランチャ・・オルゴールが聞こえてきた。

親分は柿ノ木からサアーッと大きな羽広げて隣の3階のビルに移動した。

より高いところから清掃車を見ようってことで?

・・今度は西の空をじっと見つめている。清掃車の音に耳を澄ましているのだろうか。

「北仙台は人が多いし、生ごみを漁ることはできないと思いますよ・・・」

箴言は届かないが、見るに見事な大カラス。

突然、からすの親分は

柿ノ木にイッタン戻って、鳴きもせず、

羽を大きく広げて我家の屋根を越して北の空に飛んでいった。

すると、1羽去り、2羽去り、とうとう、一羽もいなくなった。

時間にしたら30分ほどだったが、群れは脅威でありました。

カラスの大群が空を埋めたら・・・呆然と見るしか、なにもできないですね。

 日常の朝の平穏が戻ってきました。

カラスさんの集合場所だったか、生ごみ漁る気なんかさらさらなくて、待ち合わせだったのか、

からすの皆さんには畏れました。

でも、遭遇の妄想は考えてみればようございました。

からす天狗のご一行様、大カラスの親分!

礼か、

はい、

親はいろいろ子どもの心配、子どもも勉強や受験で大変だなって言ったって、

それより、何事も起きないことってすごいです。

ひめゆりの十代の少女が空を見上げて

生きるべきか、手榴弾で果てるべきか、

空に敵機が不気味に飛んで眠れなかったのはついこの間のこと。

 画家の安野光雅氏がテレビでおっしゃっていた。

「今は

100年の一度の不況というけれど60年前、焼け野原でしたよ。

食べるものはなくて・・

それに比べリャ、何を言っているのかですよ」

 仰る通りだなって思う。

平和ってすごい。

でんとした青空があるのはすごい。

有難き幸せ忘れておりました。

この空のどこかで震えている子どもたちの無事を祈らずにおりました。

隅々まで平和な空・・・に。

そして、自然にも生きものにも

畏敬が薄れておりました。

自分のことばかりでした。

 

 何日かして、ごみ置き場の道の端にからすのひと羽、発見。

根元にすっと一筆、青の筋が入っている。

あの大カラスの親分は青からすだったんだ。

もともと、カラスは不吉、不気味の鳥ではない。

古代から神のお使いで

使いのトップは

ヤタガラス(中国では太陽の中にいるという3本足の赤からす)

南の空から、1羽、又、1羽やってきた御一行様は

「ここは変わりないか」

神様は見えないけれど、使いの者は見える。

青いからすがいるとすれば、 

黒い羽の下に、黄色やみどり、

五色、七色、と、色とりどりの、ヤタガラスの一族が今も居て、

小カラス率いて、

「なんとか暮らしていけよー」

それにカラスを馬鹿にするな、これをよく見ろ、ヤタガラスの一族よ、

はらりと一枚、落としていきましたですか。

青の親分とはそれっきりだが、飛んでいった北の空に

又来てね、気が弱いので、それは飲み込んだ。

よろしくおたのん申します、お気をつけて、にした。

  今北玲子

 

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