あら、うれし
中3のⅠ君が
塾の玄関で女の人に塾のことで聞かれたという。
「ここは小学4年生の、英語はあるんですかって聞かれました」
それで、なんて答えたの?
「小学6年から英語はありますが、4年生はないです、と言いました」
小学生から通っているⅠ君はちゃんと答えてくれた。
そしたらさ、ここの塾はどうですか?なんて聞かれたんじゃないの?
「はい、聞かれました」
どう、答えたの?つい聞いてみた。
「はい、ここの塾はいいの?ってそんな感じで聞かれたから・・・・・・
『おすすめです』って、そう言いました」
Ⅰ君は小学生から通っている。気をつかってくれたのかもしれないが、
いい塾です、そう答えず、
「おすすめです」って
あら、うれし!
ありがとね
「いえいえ」
Ⅰ君のお母さんが面談のとき、
「先生、息子が夢をみたんですって。誰かに駐車場かどっかで、追いかけられて・・・・・・
そしたら、
今北先生が助けてくれたって」
まあ、うれし。
いくらでも助けますから、と言ったモンです。
「ですよね、勉強だったら助けてもらいなさいって。
うちの息子は性格がいいんですー。ほんとに」
Ⅰ君のお母さんは笑いながら自信を持って言った。
ほんとに、あたしたちもそう思います。
「ですよねえ」
息子のことを素直にこう言えるなんて、
いいお母さん。
そういえば、随分前に塾の連絡があって塾生のお宅に
電話したら、
「ほくそうしやの今北です」
「はっ?」
「塾です。ほくそうしゃです」
「間に合ってます。
孫はいま、北仙台のいい塾に通ってますから」
・・・・・・・
「あの、その(いい塾とは言いにくかったので)北仙台の・・・・・・お孫さんが
通っている塾の今北です」
「ええーっ!失礼しましたあ。塾の名前まで覚えていなくて、
いっつも北仙台のいい塾としか知らなくて」
ほわっと力が出た。
でも、塾をやめた生徒だっている。
誰ひとりやめない、そんな塾ではない。
何かの加減で、私たちと合わない人もいる。
お叱りを頂戴することもある。
そんなときに、
「成績があがりました、こんなこと、子どもも親もはじめてですー」
塾を続けてもいいのかな?力になるってことあります。
そして、15才のⅠ君の、
おすすめです。
元気が出る。
マッチですったぽっと小さな赤い火。
胸元があたたかい。
Ⅰ君は小学生の6年生になるまで,
ひとりでした。
来る日も来る日も1対1の授業で
友達がいなくて、単調な授業ではもうやめるかもしれない、
心配しました。
私と二人で漢字かるたをした。
いま、どんなものが好き?
アニメはなにが好き?
雑談もいっぱいした。
わすれないもんね。
今も卒業生の2世の小4にひとり、1対1がいます。
やはり、気になります。
この間の面談のとき、
「どうです?ひとりだものね。つまらないなんて、言ってない?」
Kちゃんのお母さんは卒業生で、笑いながら、
「先生と1対1はありがたいです。ぜいたくです。
だから、むすめには
ひとりなんだから、
今のうちになんでも先生に聞きなさいって言ってますから大丈夫です」
小池昌代って詩人が大好きなんですけど、
「まるで一点、赤い布が翻る写真を見るように思い出すことがあるのだ」
なにか感動したとき、このフレーズが
浮かぶんです。
でも、最近、脳裏に
翻る赤い布ではなく、
青空に
はたはたと
小さな大きな
白、黄、青、紫、赤、水玉、シマ模様もあったり、色とりどりの
形も大きさもちがうけれど、
・・・・・・先生、ここに住んでるの。
あたし、近くで働いています。
バスで塾を通るとき、先生元気かなって思ってるんです。
オレ、東京です、九州です、神戸です、子どもが産まれました、結婚しました、
それぞれの旗がぱたぱたと、脳裏に見える。
30年か。
子どもの手を引くのに、迷わぬ芯が
すこーし、できたのは
30年の卒業生と、
この先、夫と二人で
まだまだこの塾を続けていけそうだなって思うのは
中3のⅠ君の
「おすすめです」
・・・・・・・小さな一言の旗だったりするものですね。
REIKO