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2016年7月 アーカイブ

2016年7月 2日

6月・7月・8月

6月
定期試験が始まる。
範囲がある以上、勉強すればいい点数が取れる。
それはわかっている。

中3は、内申に影響する。
それもわかっている。わかっていても
やはり試験は気が重い。
ため息が聞こえてきそうだ。

夫は必死です。これをやれば80はいける、90はいける、
生徒の中を走り回る。
英語の暗唱はしたか? 暗写は?
学校のワークは終わったのか?

その気迫についてくる生徒もいれば、
他人事にのんきな生徒もいる。

学校は生徒の評価だが、
塾は生徒の評価だけでは済まない。
塾の評価でもある。
この塾に通わせていいのか、どうか。
成績を上げてもらえるのか、もらったのか。
親の査定を受ける感じが何年経っても、毎回ある。
たとえ、塾生が怠けていたところで、
そこを何とかするのが、塾なわけで、
そのために月謝を払っているわけで、
勉強が嫌いな生徒をなんとかしてくれるのが塾で、
生徒の定期試験の評価は、ご父兄の塾の評価でもある。
上がれば、この塾でいいと思ってもらえるし、高得点の現状維持ならいいが、
下がれば、塾を変えようか、と思われるても仕方がない。

しかし、加減というものもある。
追いかけすぎると、勉強が苦役になるし、
塾に通うのすらいやがる生徒も出てくる。
10人いれば、10人の性格や意欲、向上心があって、教え方は一律とはいかない。

「昨日と同じことをしていては変わらない。
なにか、違うことをすれば、なっ、明日につながるんだ。」
夫が、中3に熱く説いていた。
反応した生徒は何人かいた。
中2の授業に出てみる、30分早く塾に来る、
英語の暗唱だけをしに来る生徒も現れた。
試験が終わり、大幅に上がった生徒もいれば、
僅かしか上がらなかった生徒もいる。
下がるより、1点でも、上がればよし、と言い、
勉強しなかったから、と落ち込む生徒には
「次はがんばろ」と肩を叩いたりする。

私の初めての子が風邪で高熱を出した。
抱いて何度も額に手を当て、小児科の待合室で待っていた。
風邪だ、と思っても心配で不安だった。
先輩のお母さんが、「かぜ? 熱もありそうね」
声をかけてくれた。
赤ん坊の我が子同様、私もぐったりしていたのだと思う。
「子どもって風邪を引くたび、熱を出すたび、成長するよ」
肩を叩いてくれた。
その一言になんだか元気になった。

中学生は、良くとも悪くとも、試験のたびに成長する、
最近、そう思える。
無論、私たちはお月謝をいただくからには、生徒以上に
勉強し、わかる工夫をし、頑張らねばなりません。

7月
個人面談始まる。
成績が上がっても親の希望の点数とは違うこともある。
個人面談は、今回のテストについて、親の満足度を知ることでもある。
80点がずらり並んでも、こんな点数では、と嘆く親もあれば、
家では全く勉強しないので、毎日、塾に来させてもらって助かりました、と
おっしゃっていただくこともあり、
普段の親の想いを聞かせていただくには、
いい機会である。

2週間にわたる30分刻みの面談で、心に残ったこと。
最近入塾したK君のお母さんが開口一番、
「塾ってすごいですね。」
「ありがとうございます」そう思っていただけるなんて、夫と頭を下げた。
「家族中でびっくり、塾ってすごいねって」
二度も言っていただいて、恐縮至極。

K君はかなり上がった。80点台の教科が増えた。真面目で、素直で、
上がるなって主人も私も予感はあった。
今までにない点数で家中で喜ぶとは、いい家族だなとも思った。

でも、いきなりいい点数を取ったとしても、
次回は気を抜いて下がることもある。

「K君は頑張っていますが、次回、下がることもありますし、
私たちもがんばりますが、・・・・・・」
そういうことはあるから、機先を制したつもりだったが、
「わかっています。下がってもいいんです。充分です。」
K君のお母さんは強がりでもない、曇りのない笑顔だった。

K君のお母さんが、
「この子ができない子ではなく、できる子だったって分かったから、
充分でございます。この先、下がっても、この点数があれば充分なんです」

なんか感動してしまった。
私も親だから、多少上がれば、もっと上がると励ましたくなったし、そうしてきた。
我が子に、これで充分と言ったことはない。
常に上を目指す、良かれ、と思って言ってきた。

「これで充分、あなたはできる子なのね」
私は我が子に言ったことも、まして親にも言われたこともない。
なんか胸が熱くなった。
この言葉をお母さんから聞いて、そうか、充分と言うなら勉強しないぞ、とは
子どもは思わないだろう。
あったかい想いに満たされ、
なんだろ、親に認められ、許されたような気持だろうか。

私も自問することがある。
果たして、家族は私を不満に思っていないか。内心では許さないとでも思っていやしないか。
親として子どもたちに良い親ではないんじゃないか。
夫は実は不満だらけではないのか。

子どもだって、自分は親にとって満足な子か。
ふとそう思うことはあると思う。
それが、
今のあなたで充分!

いい言葉を聞いた。

もうひとつ。
Rちゃんのお母さん。
夫の授業について、話された。
「娘が、今北先生の授業は意味があると言ってました」

面談の時、私はいなかったので、
Rちゃんのお母さんが話したのは、
アルフア・歴史の授業についてかなと思った。
アルフアというのは歴史の講義をしながら年表を作ったり、試験前は試験勉強に当てたり、時に応じて理科、地理をやったり、
漢検が近づけば延々漢字のプリントをこなしたりする。
特に歴史の好きな夫の授業は手前みそだが、好評で、毎年同じようでいて、去年とは違う。
江戸時代の講義が、政治の話に及ぶこともあれば、
鉄道に詳しいことから地理の講義に脱線したり、
3年前は、初恋談議になって、中3が笑いながら真剣に聞いていた。
私がいるとストップするので、あの続きを、と何人のも男子が
心待ちにしていたこともあった。

その後、Rちゃんにそのことを直接聞いた。
「アルフアの授業がおもしろかったの?」
「いいえ、アルフアだけじゃなくて、塾の、全部の授業です」
「いつ頃、そう思うようになったの?」
「塾に入ってすぐ。
どの授業も意味があるって思って」

Rちゃんは、どんな意味があるのか、説明はしなかった。
でもとても真剣な顔で、意味があるんです、と言った。

この作品には反戦の意味がある。
この詩には弱者の抵抗、という意味がある。
Rちゃんは、こういう類いのことを言っているのではなさそうだ。

知識は、どの教科にも大人になるために必要なもので、
成長には欠かせない、大きな意味がある。
そういうことでもなさそうだ。

Rちゃんが言いたかったのは、今北先生の授業には意味がある、ということで、
夫が話すことに何かを感じたのではなかろうかと思った。

夫の語録だろうか。
プリントや教材を忘れた生徒には、
「忘れたのはいい。
黙って座ってるな。誰かに見せてもらうとか、なんか行動を起こせ。」
「諦めるな。粘れ」
「プライドを持て。志は高く持て」
「できるところを何度もやるな。自分を信じろ。」

もしや、夫の言葉に意味を感じているのだとしたら
あなたにとって夫の存在が意味がある、のだとしたら、
こんな光栄なことはないです。

8月
中3にとっては過酷な?(宿題がたくさんです)夏期講習も終わり、
キャンプに行きました。
2泊3日、子どもたちが怪我なく、無事に親御さんの元に帰る、
何より、これが願い。

しかし、子どもたちはそんなことは思ってもみなく、火傷、擦り傷、熱中症、いろいろ起きる。
ただ、教室でみる顔とは違う、青空の下できらきら輝くのは毎年、驚く。

火をおこし、釜でご飯を炊く。
初めての子どもたちはおろおろという感じです。
はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、そんな火加減はしない。
はじめガンガン、炊きあがるまで、ずっとガンガン、猛烈な火で炊く。
経験上、盛大に燃える火で炊いた方がうまくできる。

夫の「ガンガン燃やせ!ガンガン行け!」
火の番の軍手の男子は火が衰えないように、まっ赤な火の前で、汗だくで、木を足し続ける。
話もせず、ひたすらガンガン燃える火を見ている。
私も時々、火を見に行く。
火は見ていてちっとも飽きない。
かっと燃える火は、生きもののようで、
ゆらゆら揺れて木々をなめながら、かっと捉えると、
食欲旺盛、貪欲に、食いつくす。
燃えるためだけに生きている。

ああ、こうありたい、と思ったりする。
子どもたちが大人になって、何かにつまづいたり、悩んだとき、
ふとキャンプの竈の火を思いだして、
やるだけやってみよう、ひたすら燃えてみよう、
思ってくれたらいいな、などと思ったりする。

キャンプ場には、野菜を切る子どもたちの笑い声、
なにやら内緒話の女子二人、やたら全速力で走る子、
歌を歌っている子、
「玲子先生、なにしてるの?」
心にかけてくれる子、
教室では見られない光景があふれる。

二人連れが通り過ぎた。
中1のH君とT君。
私がいることに気づかず、
「キャンプって、なんか楽しいねっ」
「うん」
通り過ぎていった。

遠くの空がオレンジに染まり、光り、まぶしいほど美しかった。
夕焼けの向こうから、鳥たちが点々とやってきて
山に帰って行く。
切ない夏の夕暮れもキャンプで味わった。

無事、北仙台の塾の前で解散。
誰も怪我なく、親御さんの元に帰っていく後ろ姿に
何とも言えない安堵感と、
中1の二人の、
「キャンプって楽しいねっ」
あの一言が心に響いた。

アシスタントの高1のR君、K君、A君、Aちゃん、
後片付けのために駆けつけてくれたMちゃん、Sちゃん、
学校の先生になって、忙しいのに来てくれたT君、
(アシスタント時代も塾生に抜群の人気で、今もそうですね。
あなたは、おもしろくて、誰をも愛する良さは変わっていない)
福岡から来てくれたMちゃん、
(寝静まったしんとしたキャンプ場で、深夜まで、夜空の下で、話して楽しかった。
遠くから休みを取ってまで来てくれて、ありがとう。塾生の憧れのお姉さん!)


夏の思い出は、
かっと太陽に照らされた分だけ、強く心に焼きつく。
さて、後半はまたやってくる期末試験のための授業が始まります。

前を見ましょ。
玲子














 





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