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おじいちゃん

10月9日のこと
高校生クラスにきているU君が気になって塾に向かった。9時30分。
教室に入ると見かけない男性。高校生クラスの教室の真ん中に座っている。
「どなた?」主人にそっと聞くと
「これ、読んで」
「私はUの祖父です。ここで〔塾で〕どうやっているのか、気になって失礼とは思いましたが、顔を出させてもらいました。高校生活にいろいろ問題があるようでなんとかならないかと悩んでおり、心配しております」
内容はわかった。優しい笑顔でまっすぐな瞳の純朴な方だ。
「どうぞ」隣の部屋に移ってもらった。
U君のことはご心配に違いない。

高校生の彼はクラスメートをいじめて、部活停止、退部にまでいきそうだ。
お母さんから相談を受けていた。ストレートな心根の優しいいいお母さん。
会いたいとU君に電話をかけると「はい、行きます」素直な返事で1週間前、U君と会った。
「話してごらん。聞かせて」
彼は今までのことを話した。
学校では友達に「うざい」「死ね」連発する毎日。
クラスメートは彼を恐れ、教師の知る所となった。

「こんなことになるとは思ってもみなかった。中学時代は当たり前で
これくらい、言わないと周りから空気の読めない奴って思われるって思っていたから。高校では少しだけ目立ちたいと思っていただけなんだ」

「なんでこんなことで部活停止になったのか、俺が泣いたら、お前の涙はいじめられている生徒の100分の1だって言われた。次の先生はお前らしくないから元気出せ。次の先生は先輩にも俺のような奴がいたけど、がんばってみろと言われた」
高校の現場の先生もU君の気持ちを考えながら、戒めながら、何人もの先生が関わっていた。

優しい笑顔のおじいちゃんが神妙に話し始めた。
「先生、突然押しかけまして。私がなぜ来たか、話せば授業の邪魔になると思って、北仙台駅で切符予約の裏に書いたんです。本当にすみません」
「私はU君が大好きです。何ができるかわかりませんが、」

U君を隣の教室から呼んだ。
「おじいちゃんがあなたのことが心配でいらしているよ」
温和な声でおじいちゃんが切り出した。
「先生の前で話してくれないか。今夜はそれを聞きたくて塾まで来たんだ、ごめんな」
U君「いいよ。なに?」
「お前はいい奴だと思うが、ここで女先生の前で誓ってくれないか。
親には手を出さないって誓ってくれないか。俺はもう少しで家に帰るから心配なんだ」

そうか。おじいちゃんは学校生活、部活、心配だったが、家では不機嫌で荒れる孫が
家庭内暴力に発展しないか、居てもたってもいられなかった。
[女先生がお前を好きだって言ってくれたよ。お前を好きになってくれる人がいてよかったな。有難いな」

彼は黙って聞いていた。
おじいちゃんの言葉にうなづいて「大丈夫だよ」顔を上げた。

おじいちゃんは深々と頭を下げて玄関を出た。
「歩いてこられたのですか」
「はい。来てよかったです。女先生、孫のことをよろしくお願いします」
孫を思う、家族を思う、誰かを思う、思う心は横にいてあたたかい。
「お気をつけて」
10時半の夜に遠くなるおじいちゃんの背中に振ろうと思った手をおろした。
深く一礼した。
私たちを信頼してくださってありがとうございます。
彼はまだ、わからないことだらけの16歳。
親しく近しく呼ばせて頂きます。
おじいちゃん!あなたのお孫さんだもの。
今北玲子


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2007年10月 9日 18:31に投稿されたエントリーのページです。

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