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成績表

「前期の成績を渡します・・・」

入塾まもない子は少し驚いている。
成績表!といってもテストの素点や
5段階評価などではない。

日ごろ、感じたこと、思ったこと、努力したこと、
頑張ってほしいこと
小学生は夫婦で
中1から中3までは夫が綴る。

今日は中2に渡す日、
親御さんに郵送ではなく、
まず、本人に読んでもらう。一人ずつ名前を呼んで
「座って、これを読んでください」

はいと座って読む成績表は夫の手書きの文。

気がついた。
国語が大嫌いで文章を読むのも大嫌いな生徒だって
自分について書かれた文章は
ゆっくり、丁寧に、真剣に読むのだ。
褒められているところは
ほほがゆるんで嬉しそう・・・

自分宛の手紙は嬉しいものだ。

「学年で君は一番がんばった。」
「こつこつとよくやったよ」
自分の評価が5段階でも素点でもないことにほっとして文字を追う。

成績表は夫の発案で手紙である。

「親御さんに見せてね」
「はい」

「ありがと、ございました」

強要したことはないけど、
起立・直立して挨拶していく。

中3の息子が折しも学校の成績表を持ってきた。
神棚に供えて
「拝見」

数字ばかりが並んでいる。
所見にやっと文字を見つけて読む。

係りをよくやったこと、書いてあった。よかったです。
数字メインの
成績はそれは仕方がないが、文字が恋しくなる。
でも、いっぺんに大勢の子どもたちとの毎日は先生も大変だろう。

ふと、22歳の教育実習のことを思い出した。
運動会の総練習で正面の校長先生に向かって
ザックザックと一列になって行進してきた。
職員の末席にいたが、私に向かって大人に向かって
一心に
行進ではなく、やってくるように思えた。
名さえ顔さえ分からない子どもたちに
一体、
私はどうなってしまったのだろう。
ぽろぽろ、涙が止まらない。
この子どもたちは生きているんだ。

皆さんにも・・

わが子の運動会で子どもたちが走るのを見て・・。
笑うのを見て・・

ほおばって食べる顔見て
ああ・・
可愛くて、可愛くて、
いい子だなって思うこと・ありますよね。

笑っている。
食べている。・・・・
理由などない、じわっと涙が・・する・・

教室でも思う。
なんて、いい子なんだろう!あなたがそこにいる。
どこにもいかない感動はそこ・・

「喋ってだめよ」
「ちゃんとおやんなさい」
「丁寧に字を書きなさい」
「なんで、やってこないの?」
言ったりするけど
子どもはなんていいのだろう。
火種は消えない。

塾に来て無口で帰る子がいる。
なんて、いい子だろうと思う。
喋り通しで帰る子もいる。
なんていい子だろうと思う。

私の前で
渡された成績表を
瞬きもせず書かれてある「自分」を読んでいる。
「自分」を見ている。
どの子も懸命に生きている・・・
なんていい子なんだろうと思う。

あなたはここにいるのですね。
「あなたの役にたちたいです」
手でも握りたくなる。

今北玲子

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2008年10月10日 23:09に投稿されたエントリーのページです。

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