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3月ともなると

3月1日

同窓会会長のN君から、大きな花束、毎年、忘れずに痛み入ります。

小袁治師匠からも

あたたかい心のこもったかわいい写真つきのメール。

恐れ入ります、師匠。

夫は朝から本当にうれしそうだ。

さて、午後にいの一番の中3のHちゃんが入ってきた。

Hちゃんは制服のままの学校帰りの塾直行で、10時近くまでいる。

「先生・・・」

「ん?」

「お誕生日おめでとうございます」

えーっ、ありがと、いやあ、ありがと。

次に入ってきた中3のI君もS君も、

(この二人、家で勉強できないなら塾で勉強しなさい。何度言っても来なかったのに、今や学校から帰るとすぐに塾に来る。定期試験前に、はやばやと帰るという二人に、もう少しいて、家に帰らないで、袖をひっぱるように言った去年が嘘のようです)

「先生お誕生日おめでとうございます」

まいったなってうれしい顔している。

次々と、おめでとうが続く。

夫はほころんだ顔を元に戻す暇がない。

小学生からのI君は餅ふたつ、先生と玲子先生とで。内訳も。

ありがとな。

受け取るとまた、

R君からどら焼き、5個も入っている。

中3からの入塾だが、それだけにこういうのも、なんかじんとする。

 

夫のメールには南は九州の大分Sちゃんから、

卒業生のメールが何本も入っているようだ。携帯に返信を打っている。

つくづく、卒業生のみんなはえらいと思う。

3月1日を何年経っても忘れない、あなた方がえらい。

 

授業が終わり、自習で残っていたEちゃん。

(中3は2月の後半から入試まで5時半から毎日授業。その半数が残って

10時近くまでいる)

これ、書いたんですけど。

小さな色紙に、アニメの絵!

「今北先生おめでとうございます」

バースデーケーキを囲むかわいい男女の絵。

夫を見つめて絵の向こうから祝っている絵だ。

短時間で仕上がる絵ではなさそう。受験生なのに、申し訳なくなった。

どのくらいかかって描いたの?

二日です。

今北先生に渡してください。

まだ、隣で授業中の夫に遠慮して

私に託して、夫になにも言わずに帰っていった。

口をあんぐり開けるほどの美しい絵。、

ぐずぐずと

泣いてしまいそうになる。

繊細な下書きの上に、色鉛筆の淡い色彩が美しく

二日がかりの労力が、私の手に残った。

 

3月2日

「一日遅れですみません」

高2のMちゃんがその夜の授業中にやってきた。

「先生、お誕生日おめでとうございます」

Mちゃんは、陸上の大会に出ました、お土産です。

なにかと近況報告しがてら、来てくれる。

「先生、あと、これ、中3の皆さんに、キットカット」

パッケージの上には黒のペンでメッセージが書かれている。

そのひとつひとつに

がんばれ31期生、31期生フアイト、31期生がんばれ、

きっと勝つ、なんてベタなんですけど。

そんなこと。なんてうれしんでしょ。その気持ち。

 

3月3日

中1のY君が

「これ、お母さんから」

手渡された小風呂敷の中には

手作りのたくさんの桜餅。手紙が添えられていた。

「いつも土日も休みなく、ご指導いただきありがとうございます。

3年生が皆、志望校に合格する事を祈っています」

       」

わが子はまだ中1なのに、塾の受験生を励ますお気持ちに、

みるみる気持ちはあたたかかくなる。

そして、中3のお母さんからも、かわいい和菓子。

 

開塾当時は、お月謝以外父兄からの贈答はお断りしていた。

たとえ、イチゴひとパックでもいただけません、律儀に

お月謝をいただいていますから。

母には「親心なのよ」と諭されたが、

やはり、塾の月謝だけで充分だと思っていた。

1期生のK君の披露宴のとき、ほろ酔いになったお父さんが

「勉強は今北先生に教えてもらったし、息子には何もしなかったが、

ひとつだけ、教えたのっしゃ。やるっつうもんはもらわい。

けろっ(下さい)ては言いんすな」

人の気持ちは拒むな、ただし、ねだるな。ということか。(前にも書いたと思うが)

律儀を考え直したのはこのとき。 

物ではない。

そこにその人の気持ちが届けられる。

届けられた気持ちはなんともあたたかいことをそれから知った。

 

公立までもう日折り数えるしか残っていないが、

黙ってひたすらわが子の合格を祈る家族から、

最後の月謝袋の中に、ありがとうございます、の文字。

高校生クラスまでいた家族から、これまでのお礼と中3への激励のクッキー、

 孫のために、その友だちのために

秋田から宅急便で届いたというN君のおばあちゃんの手作りおからクッキー。

 

すこしだけですが、私達のお返しは卒舎式で

ひとりひとりに

お礼と感謝を書くことかもしれない。

あなたとのつきあいはたったひとつっきり、

今までもそう、これからもそう。

 

3月ともなると、訪問客が多い。

あのときの15歳を思い出して、中3を励ましてくれる人、

夫の誕生日を祝ってくれる人、

手には中3にあげてください。

のど飴だったり、夫の好きなせんべいだったり。

そして、卒舎式はいつですか?最後に聞いてくれる。

 卒舎生の心の片隅にあるってことだけでうれしい。

 

3月6日

「こんにちは」高1のA君、T君、Aちゃん、I君、遅れてK君、S君。

卒舎式の巻紙を折りに来てくれた。

中3に、手にはせんべいとキットカット。

「俺の誕生日の分、入ってるか?」

「入ってます」

昨日のことのような高1はわかってらっしゃる。

背も伸びて、高校生らしくなっていた。中3がうしろを振り向いてまぶしそうに高1を見ている。

大丈夫、あたたたちもそうなる。もう少しで。

 

夕方、ご父兄のお父さんだが、すぐに夫の親友になったKさん家族。

自宅にやってきた。

進路が決まったのだ。よかった、ほんと、Tちゃん。うれしそう。

医療の道は大変だろうが、Tちゃんなら、がんばれる。そう思う。

 

午前のクラスに小学校から不登校のYちゃんがいる。

(このYちゃん、すごいんです。今年の1月の漢検で小学6年ぐらいの5級を受けました。

去年、来たときには小学1,2年も大変だったのに。

それが今回の点数は190点、塾生の中で最高!)

がんばるYちゃんにいつも、途中で、誰かにいただいた菓子を「どうぞ」と渡す。

Yちゃんに山形のゆべしをあげた。

「先生、いっつも思ってたんだけど、ここの塾って菓子多いなって、

それも外国のお菓子とか、秋田とか、ふしぎだなって思って」

この菓子はね、山形の卒業生のそのお友だちの子どもが

不登校になって、相談にのってね・・・・・・

そうなんだ。

Yちゃんのこと、話したよ。学校に行かなかったけど、今、一生懸命に勉強してるって。

Yちゃんは、下を向いて恥ずかしそうにしていたが、

なにか思い出したように顔を上げると

でも、多いよね。やっぱり。

そうね、持ってくる人が優しいのね。

今北玲子

 

 

 

 

 

 

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2011年3月 2日 23:17に投稿されたエントリーのページです。

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