あのう
「あのう、今日テストあったんですけど、玲子先生......ジユウのユウって、ラーユのユウ?」
「惜しいなっ」
私より先に夫が言った。
「サンズイ、取ればいいんだよ」
今度は二つ上の小学生のひとりが言った。
サンズイの子に夫が、すかさず大声で、
「さすが、5年生!」
自由の「由」と、ラー油の「油」を、間違えたのだが、
二人とも機嫌がよさそうだ。
夫の
夫の
「惜しい」と
「さすが」が心に残ったと思う。
「違うな」
ばっさり言われればなんだか元気をなくす。
「年上だから知っていて当然だよな」
なんだかがっくりする。
ふとした言葉は
一瞬のことのようで、口に出すまで考える距離がある。
夫は発する言葉を想像したのではないかと思った。
「惜しい」と言われた子も、「さすが」と言われた子も
どちらも今日の授業はやる気があった。
その一言は、
晴れにも曇りにもなる。
褒めればいいというものでもない。
夫に一喝され、時に発奮して勉強する子もいる。
私は
「惜しいな」
「あとひと押し」
「あなたの実力だね」
「さすがだね」
「すてきだね」
「優しいのね」
「あったかいね」
「あなたが大好き」
もっとあるけど、
こういう、単純素朴な言葉が、
なんか・・・・・・好きです。
もしや、私、
愛に飢えているのでしょうか。
玲子