遅ればせながら、ご挨拶を。
新年のご挨拶もせずに2月になってしまいました。
不調法なことで
改めまして、今年もよろしくお願い申し上げます。
1月の中旬に
早々と合格を決めた塾生が二人います。
「公立までみんなと一緒に勉強してくれますか」
うなずいてくれて。
他の塾なら、
合格すればやめるでしょうに。
のんびりテレビを見たり、ゲームをしたりできる。
でも二人は
公立まで皆と同じケジュールで土曜日も日曜日も来る。
3月の卒舎式まで、一緒に勉強するということだ。
合格したら、さよならっていうのではなくて、
縁あって隣に座った仲間と最後まで一緒に。
そういう塾でありたいと思っていますが、
月謝もかかるので、親御さんの承諾もいる。
申し訳ないやら、ありがたいやらです。
毎年思うんですけど、
意外に
ここから、実力があがる。
自由に勉強できる。
この間の国語の過去問なんて、9割正解で、
軋轢のない勉強は解放されるんだなと思います。
1月29日
私立の入試。
無事に終わった。
前日に
「明日、起きられるかな」
不安そうなHちゃん、Sちゃん。
「わたしね、大事な時に頼むの」
「えっ」
意味がわからない、なんですかって顔。
倉本聡の「六羽のかもめ」というドラマがありまして、
劇団かもめ座とテレビ局の裏話でした。
放映は毎週土曜日の午後、楽しみでした。
ある回の話です。
カモメ座の看板女優の、犬山もえ子扮する淡島千影が
テレビ局に時間通りにやってこない。
もえ子さんには遅刻しないおまじないがあります。
「枕さん、枕さん、明日、〇時に起こして下さい」
大真面目に
欠かさず頼んでいたのに、その夜、忘れて頼まず寝てしまって
大事な収録に遅刻してしまう。
そんな話でした。
私はそのドラマのワンシーンを見て、枕さんという神様を信じてしまいました。
以来、結婚式の時も、(夫は遅刻しましたが)
子どもの入学式、運動会、遠足、
目ざまし時計より、枕頼みをしてきまして。
お願いして、裏切られたことは一度もないもんですから。
「やってごらん。でもあなたたちのお母さんがいるから大丈夫よね」
「やってみます。あたしは大事な試合の時も遅刻したんで」
とSちゃん。
ホホー、大事な試合に遅刻するなんて肝っ玉です。
バスケの主将だけある。
Hちゃんは毎晩、抱いて寝るパンダにもお願いしたそうで、
二人とも遅刻せず、無事に受験できました。
私立が終わった日、
何人かが、
「玲子先生、出ました、挨拶」
おお、よかった。書けた?
はい、はい、はい、の声にうれしくなった。
最近、塾で教えてもらった漢字が出た!
そう言われれば、うれしい。
考えたごろ合わせがありまして、
あいさつ、
てへんですよ。無理やり三回言う。
ムり矢り、くくく、夕
「挨拶」
「間違えました」
H君。
おお、
「無理やり三回言う、挨拶、うれしかったんですけど、
反対にしてしまいました」
「おまえ、うれしすぎたんだろ?」
周りの友達に言われ、
(わかってたのに)
声が聞こえてきそうだ。
いいってことよ。
あなたは大人になって、挨拶は絶対に間違えない。
夫も理科の予想問題が的中した。
これがあれば「挨拶」なんてどうってことない。
31日も皆無事に受験できた。
これで私立は終わった。
29日、31日とも、中3は皆、休まず揃って塾に報告に来て、
そのまま勉強している。
一日置いての2回の受験に疲労は見える。
相当な消耗にも関わらず、それに加えて私立合格の二人も
席に着いていた。
三平方の定理を間違えてしまった、とN君。
同窓会の会長の一期生の息子で、
小学1年生から通ってきている大事なN君です。
私も夫も
どきっ。
「帰ります」と元気のないN君。
夫が
「帰んなよ、今日のうちにやっておけ」
N君に言った。
入試を終えて、その後4時間も勉強した。くたくたのようだ。
「早く寝て、またあした」
私の声に夫は諦めたようだ。
「疲れているのに今日塾に来ただけ、すごいよ」
初めての受験です。
緊張と、あの自分のミスはどうなるんだろう、不安や後悔が
どの生徒からも感じられる。
「今日は寝なさい」
「はい」
ゆっくりドアに向かうN君を見送った。
これから前期試験、後期試験、と続く。
ここからです。
終わったことはよしとしましょ。
電子ピアノの上に馬太郎がいます。
この間、赤井沢のレジに茶色の小さな馬がおりまして、
「かわいいね」
つい言ったら、
「動くんですよ」
レジの女性が馬の腹に手を入れてスイッチを入れた。
ひひーん、競馬のフアンフアーレが鳴り、幼児が喜びそうな、
鈍足で走る、20センチほどの、黒目の顔がなんともめんこくて、
夫に「買っていい?」
「うん」
1月のことでした。
早速、
「みなさんの受験がうまくいくように、干支にちなんで
馬太郎を買ってきました」
中3に披露しました。
馬太郎は、ヒヒーンと前足をあげ、音楽に合わせて、
一生懸命に駆ける。
それに音に反応する。手を叩くと動く。
「がんばれ!」って言ってみた。なんとひひーん、と走った。
受験って、験を担ぎたくなる。
馬太郎よ、ここにいる全員が、がんばれに反応して
走れますように。うまくいきますように。
あははと、笑っていた中3ですが、
子供だましみたいな馬太郎を見せられたってどうなんだろ。
そんな気がしたりして、
それより「キットカット」の方がよかったかな、
思ったりしていたところ、
後日、
馬太郎の背中に大きなピンクのリボンを発見。
中3の誰かがかけてくれたのですね。
歓迎のリボンか、願いを結ぶリボンか。
合格を頼みたい気分もあるのかもしれない。
そうよね。
空にも風にもおひさまにも、ありとあらゆるものに頼みましょ。
15歳の初めての受験です。
毎日、学校から直行で制服のまま、中3のほとんどが塾に来る。
夜の9時半過ぎまで、夕方、軽食をとり、居続ける。
疲れて居眠りする生徒がいたら、肩を叩く。
「すいません」
あわてて起きるが、ボーっとしている。
少しくらいならジャンプ、読んでもいいよ。
集英社のK君へ、
震災以降、毎月のジャンプを送ってくれてありがとう。
6時間も7時間も
教室で勉強している中3の
一服になっています。
眠気覚ましに、トイレに行ったついでのちょいと休憩に、
夕方の腹ごしらえのパンやおにぎりを食べながら
片手にジャンプです。
勉強の合間の唯一の楽しみのようです。
あなたから送られてくるこんもりした茶封筒に
来た!って顔の中3が大勢います。
お世話になっております。
中1も中2も、
授業が終わってほんの少し、
読んでから帰る生徒がいます。
小学生は階段に座って読みます。
たぶんいるな、と覗いてみると、
無心に読んでいる姿は
いつも感動してしまいます。
まんがは凄いなって思う一瞬です。
「早く帰んなさいよ」
「はーい」
目はジャンプに釘付けです。
どこで読んでも、同じでしょうが、
卒業生のK君が送って来るジャンプは、
北剏舎の、塾で読むジャンプは
素敵な特別なジャンプだと思います。
特に、この時期、
あなたの優しさは
中3のうれし楽し、休息になっています。
ほんとにありがとう。
恩にきます。
玲子