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2014年5月 アーカイブ

2014年5月 3日

入塾生が入って来ました。

3月の新聞の折り込みチラシを見て、
知人から聞いて、
兄に続いて妹をお願いします、
入塾のきっかけはさまざまで、
入りたいという人とは、まず親子と面談をしまして、
授業を受けて頂く。

面談は緊張するが、思ったことを、感じたことを言うように心がける。
あんな夫婦とは思わなった、のちに思われたくないですし、
私です、主人です、こういう塾です、
授業のやり方や、進め方、
時に、私は掃除が下手で、雑然としていますが、
言い訳したり、
私たちを気に入って下されば、
ご縁ですからこちらからお断りすることはありません。
(でも、定員に達すれば申し訳ありません)

面談を終えて、授業を受けてもらって、
入塾申し込み書が提出されれば、入塾です。
「この子と、このご家族と、ご縁を大切につきあって行く」
思い定め、少しでも役に立てますように、と思う

4月、5月に、
そういう順番を経て、申込書を手にした子どもたちが入ってきました。
新しい環境というのは子どもをいきいきとするような気がします。
どの子も瞳がきらきらしている。
算数ができなくとも、この塾に入ったらできるようになる、漢字が嫌いでも
この塾に入ったら、できるようになる。
子どもたちは新しい環境に期待する。もしや魔法の塾に見えるのかもしれない。

魔法は使えないが、あるとすれば、
出会ったことであり、
あなたとつきあうことに不思議があるような気がする。
小学生に、
「木乃伊」を「ミイラ」
「土竜」は「もぐら」と読むんですよ。
へえーっ
八百屋、魚屋、ことわざなど
「いろいろかるた」から、私のつきあいは始まる。

小学生の入塾申込書に
『なぜ、この塾を選ばれましたか』
父兄のコメントを書く欄がありまして。
(「かるたが楽しかった。またやりたい!」と本人が希望したので
今北先生にお世話になりたいと思ったからです)
うれしいです。

以下、嬉しかったコメントを少し、
(曖昧ですが、ドアを開けて入った時の空気の流れが良かったです)
教室に流れる空気が気に入って下さるなんて、感激です。

(ひとりひとりをじっくり見てくれると思いました。チラシやブログを見て、
あたたかい先生だと思いました)
たいした人間ではありませんが、恐れ入ります。  

(以前(この間)の、新聞の折り込みで入っていた広告を見た時に
「いつか息子を通わせてみたい」と思っていました)
チラシは卒業生、M君の作です。
パッケージコンクールで大賞を取るなど、才能あふれる有望・注目の
デザイナー、私たちの大好きな自慢の卒業生の一人、M君の力作です。
伝えます。喜ぶと思います。

(10年ほど前に偶然チラシを目にしてからずっと気になっていました。
北剏舎日記を読ませていただきました。皆さん、素晴らしいですね。
息子も仲間に入れていただきたいと心から思いました)
入塾したその瞬間から仲間です。
夫がよく子どもたちに言います。
「みんな仲間だ。間違ってもいい、よそで恥をかくよりここで恥をかけ」
友達って言葉も勿論いいですが、仲間っていうのもいいなって思います。

先生って名のつく人には言いたいことも言えないもんですよね。
PTAで経験済みです。できれば皆さんとはそうはなりたくない。

開塾当時はご父兄の皆さんは年上で、まだ若かった私たちに心安く、
「塾に行きたがらないんですけど、言って聞かせて下さい」
「塾をやめたいって子どもが言っていますが、
やめないようになんとか説得して下さい」
「親子げんかしまして、今、塾に行きました。ホローお願いします」
それがご父兄と同世代になって、
互いに悩みを打ちあけることができる仲間に思えました。
そして今、ご父兄は私たちより後輩となり、
年上は遠慮かもしれませんが、お役に立つことがあれば、と
思っています。塾生同士だけではなく、
ご父兄の皆さんとも子育ての仲間でありたいと思っています。

(家庭的な所に惹かれました。いまどきの塾にない昔ながらの
良さにとても感動しました)
昔ながらで30数年も経ちました。それ以外、できないのかもしれません。
何よりのお言葉です。

(兄もお世話になり、塾に入るならば北剏舎以外は考えていなかったからです)
勿体ないほどです。Mさん。
 
この塾を選んで良かった、そう思っていただけるよう、
精進したいと心新たにです。

入塾してまもなく小学生のひとりが夫に言ったそうで。
「学校のテストができるようになったら、塾、やめるんで」
正直!

それぞれ、利用の仕方はありますよね。
私と夫は、
出会った子どもたちとは
勿論、勉強がわかるように、
点数が伸びるように、
わかるまで教えたいと思いますが、
でも勉強の切り売りはしたくない、と八杉先生が言っていらしたように、
月謝に見合ったことをするのではなく、
親でもない、学校の教師でもない、
この塾を選んでくれた子どもたちには
勉強が大嫌いでも、
大好きでも、
学ぶことがいやでも、
分からなくとも、
投げ出さずに、
わかるからといって、途中の計算を省略しないように、
丁寧に、
字をきれいに、
挨拶はきちんと。

でも、
試験も近いのに、このままではいけないと思えば、
「明日来い」と夫。
来れません。
「なんでだ」
用事があるんで、
「遅れているんだから、塾に来て、やれ」
強く言ったりもします。
みすみす、今やらなければ点数が取れない子どもたちを
いいよいいよ、と放置はできない。
わからないところをそのままにしておけば、
ぐらついた土台になる。
切り売りの知識ではなく、
誰にも奪われない基礎の土台を作るお手伝いをしたいものだと思います。

5月某日
卒舎式の時、
「母上様、毎日おにぎりありがとうございました」
母を泣かせたあのA君が、やってきた。(私も言われたら泣く)
「どうしたの}
「高校生クラスに入りたいんで」

おおっ、戻ってきた。
中3に、雨の日も雪の日も風邪で具合が悪い時も、
毎日、学校直行で塾に来たA君。
改めての高校生クラスの入塾申し込みはうれしくて、うれしくて。
家族構成、「父、母、オレ、弟、犬」
笑ってしまった。
そして、
特技、「一発芸」
知らなかった。
「今年の演芸大会にゲストとしてお呼びしてもよろしいでしょうか」
「いいですよ」
楽しみ。
中3の時の「びびるな危険」という作文も忘れられない。
内容は、(部活の顧問の先生が大事な試合前に
A君たち部員を前にして、びびるな危険、と言って、
緊張を吹き飛ばしてくれた。顧問の先生に感謝)という内容の作文。
意表を突く言葉に感動してしまった。
「なんていい先生なの!」
入試後に言ったら
「あれ、嘘ですよ」
(作文は嘘でもいい。30年も言っていて、書きたいことがあれば、
それを言うためなら、嘘でもいい。
或いは題材がなければ嘘でも構わない、と思っていまして。
但し、書いた作文は、嘘なら嘘と一言、書いて下さい、とお願いしていた)

「嘘と書かなかっただけで」とA君。
「嘘でも、あの作文はいい話!」
「玲子先生にあげますよ」
びびるな危険?
「はい」
プレゼントされましたんで、私物になりましたんで、
いつかどこかで、使いたいと思っております。
ありがと!大事にする!

5月某日
高2のMちゃんがやってきた。
「差し入れです」
第1志望を大粒の涙で飲んだMちゃんは、いつも心にあって、
どうしているんだろ、元気でいるだろうか。
将来はこれからと思うが、案じていましたから、来てくれたのは嬉しくて。
「元気でやってる?」
会えば、聞いてしまう。
「玲子先生、やってもやっても勉強が追いつかなくて」
「そうなの。でもあなたなら、きっと大丈夫」
「そうなんですか」
「そうよ」
Mちゃんがちょっと笑った。

母親ってゴミ箱ですよね。
いろんなお母さん方に言ってきた。
私も子育てをしてきて、子どもは今日の不平不満をどこに捨てるか、
身近な母親だなって思っていたもんですから。

Mちゃんには優しいお父さんお母さんがいる。
日頃の愚痴は捨ててはいるだろうが、
私にも
愚痴や弱気をいつだって捨てに来ていい。
できればあなたのゴミ箱になりたいものです。
帰るときは身軽になってがんばんなさいよ!
あなたの学力と努力があれば、
道は拓ける。

また、ドアが開いた。
あらら、今度は高1の二人。
本気の挑戦をして私立に行ったQくんとH君。
「どうした?」
なにかあったのだろうか。
この二人もすごく気になっていました。

「英検の過去問をもらいに来たんで」
どうぞどうぞ、コピーは自分でできるよね。
はい。
英検の何年か分のコピーを、
コピー機の前で二人で笑いながらとっていた。
Q君、
その背中に時間が止まった。

合格発表後、
高校に行って本番の点数を聞きに行って、
我が家に届けてくれた。
一緒に玄関に立ったお母さんが、内緒話でもするように、
「自分の点数が塾の参考になるからって息子が聞いてきたんです」
小さな紙をもらった。
わざわざ高校に行って結果を聞くのはいやだったろうに、
手渡された印字の点数にうるんだ。
うるんだのはそれだけではない。
得意の英語は99点。合計点は自己ベストだと思うし、
志望校の合格ラインも充分に上回っていた。

母親の後ろで
下を向いていたQ君が顔をあげ、私と目があった。
にこっと笑った。

私ならできないと思った。
塾の参考になるからなんて、思ったりはしないだろう。

そのQ君が今、コピー機の前で笑っている。
頭を下げたくなった。

じゃあ玲子先生、
高1の二人は帰るようだ。
横のH君が、
「高校生クラスに来ようかな」
笑ってつぶいた。
いつだって待っている。
また、
お役にたてるなら、こんな嬉しいことはない。待ってるよ。

不運に見舞われた卒業生に、
言うまい、聞くまい、だが
くやしかったろうに、どれだけ泣いただろうかと想う。
親御さんにしてもいかばかりだったかと想う。
私たちも、我が子4人中、3人、涙だった。
子どもの涙や落ち込んだ横顔は胸が痛くて不憫で切ない。
親にとって、
子どもの笑顔ほど幸福はない。これさえあれば何もいらないと思う。
でも、明日の笑顔を信じればいい。信じたい。

角川春樹氏の文章の一節を思い出す。
(神は人間を試すことがあるという。
その人間に大きな役割があればあるほど、
その人間を逆境に置くというのだ。)

5月某日
塾の前で中2の男子のA君、T君、二人が立っていた。
「どうしたの」
二人とも訳も言わずに黙っていた。
授業にはまだ早い。
誰かと待ち合わせかな。

玄関に入ってみると、
去年、塾をやめて、一人で勉強すると退塾したS君が夫と話していた。
「塾に戻りたいって」
夫の声が楽しそうに弾んでいる。
「ほんとに。あなたのこと、待ってた。ずっと」
私も弾んで声が大きくなった。
昨年、
S君のお母さんから、「休んで、少し様子を見ます」
そして、
「やはり一人でやってみると息子がいうので」と退塾していった。

これまでも塾をやめます、という生徒は何人もいた。
学校はやめられないけれど、塾はやめられる。
去っていく生徒に何も言えない。
悪いのは私たちである。
あれかこれか、と理由を考える。
何を考えても気持ちはしぼむ。
時には私たちが一生懸命になればなるほど
去っていく生徒もいた。

反対に、退塾したけれど、1年後、2年後に、
塾に戻りたいんです、はにかみながら
言われた時は、
失恋が両想いになった気分になる。

戻ってきたS君にもそういう気分。
「ありがと、うれしい。ありがと」
なんのお礼かそういう気分。、
「試験も近いから、すぐに来いよ」夫も頬が緩んだ笑顔。
「はい、よろしくお願いします」
S君が玄関を出て行った。

「どうだった?」
T君とA君の二人の声が外から聞こえた
そうか、塾に戻れるかどうか心配で、つき添ってきたんだ。
「だいじょうぶだった」S君の声が報告していた。
「よかったな」
付き添いの二人の声がまた聞こえた。
玄関から顔を出した。
「よかったね」
驚いて振り向いた中2の3人と笑った。

子どもの笑顔っていいな。
どこにも傷のない、
極上の青空って気がする。

玲子

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