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2月のありがとう

1月下旬から卒業生の来訪が増える。

1月26日
「明日から私立ですよね」
高校生のSちゃんから差し入れ。
キットカット。

1月27日
「みんながんばっていますか。中3のみんなにどうぞ」
大学生のOちゃん、カントリーマム。

1月28日
「そろそろ私立が始まる頃ですよね」
卒業生のJ君、キットカット。

1月29日
「思い出しますよね」
卒業生のV君、キットカット。

1月30日
「気持ちです、中3に」
卒業生のG君、
お菓子がいろいろ。

2月3日
「今日は節分だから、豆を持ってきました」
高校生のH君、T君、
節分に豆まきをしたことなどなくて、
それならと
中3と全員で、
鬼は外、福は内、もらったピーナッツの袋を
片手に、
右と左の教室を小走り、双方の窓を開け、
階段を降り、玄関のドアを開け、
鬼さんには、退出願いまして、
皆で、合格の福の豆と念じて、頂きました。

でも、教室には邪鬼はいないと思っております。
なにかいるような気はします。
(この間、小学生に同じことを言ったら「非科学的です」と
諭されましたが)
楽しいことが大好きな、
演芸大会も
卒舎式も、
大好きで、
笑おうよ、話そうよ、
遊んでもらいたい
可愛い方たちはいるような気がしまして、
二つの教室で遊ぶ、
「みんな元気でいろな」
願ってくれる心優しい
皆さんに一言。
「入試前だから、
お静かに。
中1も中2も定期試験も近いし、
邪魔しないように」


2月5日
「前期入試も近いですね」
高校生クラスの4人が菓子の袋をいくつも持ってきた。

中3の、男子のK君、K君、即座に席を立ってきた。
「ありがとうございます」
高校生に礼にやってきた。
「苦しゅうない」
おどけた高校生のR君、
「がんばれよ」
大きな声でT君。

「そういえば、中3のとき、あなたはいっつも
古いからって、代表でお礼を言えって、言われたね」
「そうでした」
高2のA君。

塾では、
差し入れがあった時、一番長く塾にいる生徒が、「お前が言え」
夫に言われて、代表になる。

去年は、同窓会会長の、小学生1年からいたN君だった。
2年前はA君で、
すっかり大人になったA君と二人で懐かしい、あの時間を思い出した。

2月4日
私立の発表がすべて終わった。
全員、どこかに受かっている。
よかった。
一人残らず、みんな、高校生になれる。

あとは公立の最終志望校を決めるだけだ。
これが、毎年いろいろある。

合格率は、五分五分、四分六、夫は正直に言う。
何と言われようが、
意中の高校はここと決めて、
変えない生徒はいる。
「覚悟はあるか」
はい、と潔く答える塾生については、
何も言わない。

覚悟もない。
落ちたくもない。
親が、
おじさんが、
おばさんが、
先輩が、友達が、その高校はいいと言っていたから。
あなたの気持ちはどこですか。
わからない。
揺れに揺れて、決まらない生徒がいる。
仕方ない。
初めての経験です。
どこの高校に決めても合格できそうな気がするし、
或いはどこの高校に決めても不安が募って悩んでしまう。
誰かがいいという高校に気持ちは傾く。

今年はどうか。
まだ時間はある。
15歳の受験はあれでよかった。
そう思える選択でありますように。

2月7日
バレンタインが近づいて、
Mちゃん母娘がやってきた。
今北先生にチョコレート、塾生のみんなに、
お菓子。
Mちゃんのお母さんのあの一言を思いだす。
「先生、叱咤激励の、叱咤はできるけど、激励ができない」
母親は卒業生で中学生から知っている。
さっぱりとした気性で
激励ができないと大笑いしてからもう6年も経つのに、毎年、
やってきてくれる。
(他のご父兄からも差し入れを頂きました。A君のお母さん、L君のお母さん、
有難うございました)

2月8日
高校生のT君、
「気持ちですから」
チョコ。

2月14日、
バレンタイン、
私から中3全員にチョコを配る。
「あと半月、
がんばんなさいよ」
一人一人の手に渡す。
男も女もなくて、
多少お菓子屋の陰謀かと思いますが、
世の中がそうなっているのなら、
もらわないよりもらった方がいい。

中3の男子に渡しながら尋ねた。
「お母さんからチョコ来る?」
「来ますよ」
うれしいね。
「うれしいですよ。お母さんは俺の女なんで」
そんなことを(息子に)言われたらどんなにうれしいかな。
「冗談ですよ。玲子先生、俺、マザコンじゃないですから」
男はみんな、マザコンでいいの。
「玲子先生、おれはマザコンじゃないですって」
主人もお母さん大好きだよ。
「ほんとですか」
お母さんを大事にする人は、恋人も妻も大切にします。

中3の女の子は
「私の作った生チョコ」
「私の焼いたクッキーです」
逆にいただきました。
ルックチョコもありました。
(私の愛するルック)

2月15日、
定期試験も近い。
中1は、まだ試験の怖さなどない。
8時、授業が終わると、
先生、帰ります。
さっさと時間通りの帰り支度。

「ちょっと待て。なにやったか、見せろ。
直してないじゃないか。直さなかったら、塾に来た意味がない。直せ」
私がチェックした。
その中で、S君のワークが満点?
おかしいな。
同じ問題をしてみた。
答えられない。
「誰に答えを聞いたの?」
「お母さん」
(正直でよろしい)
これが試験に出たら答えられないよね。
「たしかに!」
大人びた口調に笑ってしまった。
お父さんやお母さんに教えてもらうのはいいけれど、
あなたがわからないとねえ。
「どうします?」
事情を言って夫の顔を見た。
S君は、夫に怒られると身構えている。
静かな声がした。
「こんなことをしたってどうしようもないだろ」
「はい」
「もう一回やれ」


中1といっても
心の成長に差はあるけれど、小学7年生のようでもある。、
今北先生が塾に来いというから来ただけで、
高々と手をあげる。
「わかりません」
教科書は見たの? 調べたの?
教科書はありません。
持ってきてないの?
持ってきてません。

「じゃあ、いい。わかんなかったら俺に聞け」
夫が走り回る。

同じ質問に集まった中3には熱がこもる。
真剣に夫の説明を聞いていたように思えたが、
全員が叱られた。
「メモを取らないのか、鉛筆を持て。
信じられない。お前たちは合格したくないのか」

今日は日曜日で、中3が午後1時~5時
その後、中1,2は5時~8時(1時から来てもいいことになっていた)
もう9時も近かった。
夫は
何も食べていなかった。
[玲子さん、バナナ持ってきてないよね」
毎日、18時に
バナナと野菜ジュースを私が用意するのだが、
中1、2が夕方から大勢来たので、忘れてしまった。
「ごめん」
「いいよ、ないんなら」

教室には
私立が終わってから、休日はいの一番に来て、最後まで
10時間もいるNちゃんがひとり、残っていた。
がんばれ、
Nちゃんの顔を見ると思う。祈る。

9時だ。おなかも空いただろう。
「Nちゃん、そろそろ帰ろうか。家でやる漢字のプリントは持ったよね」
「はい」
今夜もがんばるんだよ。
「はい」

「先生」
Nちゃんが近づいて来た。
(帰る間際になっても質問するなんていいぞ!)
思った。
夫も同じだったようで、「なんだ?」とうれしそうに顔をあげた。

「これ」
プリントかワークか、教科書があるものと思って、
「これ」というところに視線がいった。

夫が笑いだした。
「なんで、お前がバナナ持ってんの?」
「おばあちゃんが持っていきなさいって」
「せっかくのおばあちゃんの気持ちだから、Nちゃんが
食べなさい」

「......今北先生、食べていいです」
差し出された黄色いバナナ、
おばあちゃんが孫に持たせ食べさせたかったバナナ、
頂く訳には行かない、と思いながら、
3人で、1本のバナナがなんだかおかしくて
笑ってしまった。

気持ちが嬉しい。
黙っていればNちゃんがバナナが持っているなんて、
私たちは知らないのに、
持っているバナナを隠しておけなかった。
自分だって空腹のはず、
食べずに差し出す気持ちが嬉しかった。
無垢な子どもの気持ちってある。
気持ちだけ、いただくとNちゃんに言っても
「どうぞ、食べて下さい」
引っ込めるつもりはなさそうだ。
「せっかくだから、もらうな」
夫の言葉にNちゃんがにこっと笑った。

1本のバナナの
すっきりとした黄色が
目に焼きついた。
ありがと。

玲子












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2015年2月 9日 22:03に投稿されたエントリーのページです。

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