昔から耳は良かったのか、29年も塾をしていて、耳が鍛えられたのか、教室の隅っこで、
「うるせいよ、ばあか」
「うざいよ、」
さとく聞こえる。
「言っちゃダメ。
そんな言葉は一生使わなくともいいからね」
小声を聞きつける。
地獄耳は夫も同様で、なぜか子どもたちのひそひそ話も鮮明に聞こえる。
「ありがと」
「教えてもらってごめんね」
飛んでいって、
「優しいね」
なんて言ったりする。
聞こえてくるのだ。
街の声も聞こえる。
通りすがりの声も拾ってしまう。
北仙台駅前、
向こうからホットパンツに生足、人目を引く綺麗なお嬢さん二人。
「結構、私
負けず嫌いなんだけど、やる気がないんだよね」
「だよねえー。わかる」
「私も夢はあるんだよね。でも、やる気しない?」
「だよねえ。わかるうー」
通り過ぎていった。
・・・負けず嫌いでやる気ない・・
・・・夢はあるけど、やる気ない・・・か。
負けず嫌いである。
夢がある。
言いたかったのだろうか。
やる気がない。
言いたかったのだろうか。
お嬢さん、
大きな声じゃ言えないけれど、
贅沢、って言われるよ・・・
あら?・私もそう・・・
部屋をきれいにしたいけど、ぐちゃぐちゃ・・
やる気がしないんだけど・・。
おっと!
そのまま、私?
怠け者の論理か・・
贅沢か・・・
なんか、わかる。
その気持ち・・
すごくわかる・・・その気持ち・・
やる気がない。
そういう時はある。
勘だけど、
負けず嫌いだけど・・
夢はあるんだけど・・・
それが本心だと思う。
やる気がないのはくっつけたもので・・・
子どもたちは
「成績があがりたいんだけど、やる気がなくて・・・」
「あの高校に入りたいんだけど、無理かもしれない・・やる気がない」
本心は前にあるように思う。
成績が上がりたい!
あの高校に行きたい!
なら、勉強すればいいじゃないか。
やればいいじゃないか。
そうなんですね。
それを相談されるのが塾なのでしょうね。
上がるためにはここをやれ。
夫が言う。
できなかったら、2回やれ。
3回やれ。
しつこくやれ。
やる気というより、
方法と回数とか、分量。
でもさ・・
・・・
今、やる気ないんだもん・・・
仕方ないね。
負けず嫌いとは負けたくないのですね。
夢というのは
装飾品ではないのですね。
やる気とプライドには
オリンピックじゃないけれど、
応援が力になる。
世界でひとりぼっちなら、やる気もしない。
応援しているよ・・
やれるよ・・
親でも友達でも
その一言で立ち向かうこともできれば
黙ってみていられれば、やる子どももいる。
あなたが笑えばいい。
生きていればいい。
願いが人を動かす気がする。
やる気がない・・・
なんて、
魚のシッポ。
本体、別にアリ。
今北玲子