秋の匂いがする。
塾では定期試験の勉強で連日、中学生が授業の日を問わず、
満杯になっている。
夏の疲れ・・
中3の
「よーし、やるぞ・・」
春からの満々の気迫も緊張も
夏過ぎて、少し緩んで力が出ない頃でもある。
ぐずぐずとやる気の起きない気持ちをもてあまし、
半端な残暑にいる。
私も、同じ、
夏にまだ、追いかけられている気がする。
いや、
大人は朝から晩まで追いかけられて、追いかけて・・逃げて・・・・
時間を友達にはできないですね。
その点、小学生はのんびりと体感している気がする。
「つまらない」
よく言いますね。
時間がゆっくり流れているからでしょうか。
何をしても
大人より一日はたっぷりあるから、
休日ともなると
時間と遊べるから、
時間が恐ろしくないから
友達だから、「つまんなーい」って言える。
私も
ここらで、夏にさよならするにも
秋にお目もじするにも
季節の変わり目の挨拶代わりに
今日は
夏の延長みたいに追われて
あれして、これして、
やめることにした。
追いかけて、追いかけられての節目のない毎日は
生活のためといえ、
用事をこなすためとはいえ、
やめようか・・
夏に最敬礼、秋に敬礼。
今日は、
歯科医の診療、そのあと、銀行に行って、昼食とって
小学生の授業の準備をして、6時に授業を終えて、夕食をこさえて
また、塾に行って9時半に家に戻り、又、夕食を準備してお酒を飲む。
一通りの予定が見えるが、
今は午前9時半。
歯科の診療予約まで1時間。
ちょっとだけ「私の時間」と向き合うことにする。
気持ちばかりの季節の屑々の儀式といいますか。
せかされれば、家事をして一時間はすぐに使い切る。
テーブルに座って
使い道を考える。
何もしないでいましょうか。
時間は
そうと向き合えば、
素直に
「ご自由にお過ごしなさいまし」
止まる。
たまには
あなたの背中を追いかけない。
たまには
あなたに背中を見せない。
「私の時間」のあなたは
トイレ、風呂場の掃除はどうしました?夕食まで30分しかありませんよ。
トントン、肩をたたいても私は振り向く気配もなくて、
年がら年中、私に「忠告、注進」
さぞやお疲れでしょう。
それは私の子供の頃からですよね。
今日の宿題したの・・夏休みの宿題は・・・受験は大丈夫・・何もしていないのに寝ちゃだめ・・
あなたは私のためにせっせと話しかけ、
私はこれといったお礼も言われずにねえ・・
たまには、
私の一時間、あなたもごゆっくり、どうぞ。
私は何もしませんから、あなたも何も言わなくていいです。
「願ったりで・・
あなた様は、そうそう、私の言うことを聞きませんで・・
こうした方がいい、ああした方がいいかと、思いまして・・
あなた様の時間をお供するには、こちらの勝手でございまいますが、
あなた様は私を引っ張るのではなくて、私が見かねて口を出す連続で
できれば、ついて来い、リードしていただきとうございました。
おわかりいただければご自由でいいと思います。
そうして、お暮らしなさいまし。今、自由にしてほしいとおっしゃるなら、
あなた様ももう大人ですから
納得でございましょうから、
私も気が楽でございます」
目には見えない時間とは
大切な相談役で、
指南役で、
なのに、
今まで、お目にかかりたいと引き止めたこともなくて、
お礼の一言も申し上げずに、心配をかけ通しで
相すみません。
「さあさ、どうそ」
お茶をすすめたこともございませんでした。
忙しいあなたを
ただただ、追いかけ回しておりました。
あなたの
よかれと思うアドバイスも聞きませんでしたね。
たまには私とお茶でも。
私は何もしないのだから、
どうぞ、休んでくださいまし。
さて、と・・・
何もしないと決めた
一時間というあなたは
何もしなければ、
本当にゆっくりと長いもんです。
過ごしてみると
つまらない・・と思いますね・・
テレビもない、本も読まない、
何もしない・・・・何もない・・
子どもの頃が戻ってきました。
「つまーんなーい」
なにもしない休憩は
何をしたいか、よくわかるものでございます。
うずうずとわかるものですね。
「時間」は黙っていても心ん中を照らすんですね。
恐れ入りました。
秋の匂いがするから
虫の音も聞きます。
長年、共にしてきたあなたの言うことも聞きますね。
「無理はしないで」
「はい」
私は初めて言うことを聞くのではないでしょうか。
15歳の塾の子どもたちとの
「それぞれの時間」の皆さんへ・・
肩先に止まって、肩を抱いて、
「さあ、ペンを持って」
「テレビを消して」
「3月に合格で笑うんですよ」
「あなたはまだ、これっきりというほど勉強はしていませんよね。やってみなさい」
「まだ、半年もありますよ。行きたい高校まで走んなさい。よーい・ドン」
教師の言うことも親の言うことも聞かないけれど
「時」の
あなたのいうことは胸にしんと通ります。
気がつくように、こうしちゃいられない、と思うような、
大きめの声で話しかけてくださいまし。
言うこと聞かずじまいの私がお願いするのもなんですが、
毎年、秋風吹く、この時期になると
心配になりまして、
よろしくお願いいたします。
(18歳以降の卒業生の受験生にもお願いいたします。)
今北玲子