人の機嫌のよしあしは難儀である。
こちらが上機嫌でも
相手がなにやら不機嫌であれば、
言葉を拾い、少しでも心持を戻してもらおうと苦心するが、
不機嫌の大元は
「わかってもらえない」・・だったり
「思い通りにならない」・・だったり
私の力量ではなかなか、うまくいかない。
小学生は授業中、たまに不機嫌になることがあっても
二つ考えると収まりがつく。
夕方でおなかが空いた。
疲れて眠い。
母親に「おなか空いたア」
「眠いよお」
言えるのに塾の先生には言えないから、我慢する。
鉛筆の走りもそりゃあ、鈍くなり、
「きれいな字を書いてね・・・進んでないよ・・・」
はい,
とは言うものの、
思い当たる不機嫌はどっちかだろう。
子どもながらになんとか処理しているのもわかる。
もう少しだよ、ガンバレー。漢字かるたしたら、帰ろうね。
「うん。よし・がんばるぞー」
俄然、もりもり勉強しだすからには当たっているのでしょうね。
中3くらいはわからないことがある。
息子が不機嫌。
成績がよくないのです。
自分のせいです。
でも、
気を使ってしまう。元気になってほしくて、あれこれ・・
えてして、母の立場は十中八九、
同居人の機嫌に揺れる。
いつしか、巻き込まれ、こちらもそこに陥る。
家人がいつ持ってくるかわからない突風に
応対する言葉も準備もない。
午後の気休め時、
NHK,日本の話芸にチャンネルをあわせた。
あらら、柳家小三治師匠のお出ましで正座した。
「お化け長屋」
空きになった長屋のひとつ。
しばらく、物置代わりに使っていたから、
長屋の住人は誰にも貸したくなくて、
お化けが出るということにするが・・・
声を出して笑っちゃった。
少し、ずれて困っていた私の機嫌が
笑うと戻ってくる。
ずれた隙間は笑えばそうでもなくなってくる。
悲しくとも、苦しくとも
内から笑えないのなら、
無理しても外から笑わしてもらうと
笑うたびに
こっちオーライ、もう少しオーライ、
そうそう、この辺までオーライ・・
いや、もっと、はいはい、
いたるところまで、笑えせてもらえば
不機嫌の自分の難儀も消える。たいしたことじゃない。
落語は
機嫌の舵取り名手だろうか。
笑いなさい・・な。
この世に生まれて
がんばるのもいいけれど、
笑うのはもっといい。
笑うと
なんと不思議なこと!
心の臓やら
腹の虫やら
疲れた頭の主やら
わいわいと活気が出て、
愚痴も不機嫌も
端っこにおいやって、溶かしてしまう。
「これがいいですぅ。あったかくなりますぅ」
笑うと
ポッと開いて
パーッと光る
お天道様がやってくる。
今北玲子