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お地蔵さん

暮れの恒例の忘年会のひとつに相馬家族ネットワークがある。
毎年、夫は欠かさず、いそいそ出かける。
私も一度お邪魔したが
お集まりの皆さんとは古いおつき合いだし、
なにより、Kさんご夫妻をはじめ、気の置けない方々で
それはそれは楽しい楽しい忘年会・飲み会なのであります。

今年はSさんから行かなかった私に、と土産をいただいた。
薬指と親指ほどの身丈のお地蔵さん2体。
道端にいる昔ながらの地蔵さまではなく、
Sさん手作りです。
ほうずき頭に
お着物はぐるりと巻いた布をまとっている感じの青銅のお地蔵さま。
小さいものが大好きで仏像もお地蔵さんも大好きな
私の何もかもが満たされたお二方で・・・

「まあ、かわいい!まあ、まあ、」
連呼していつもお姿を拝見できるように出窓にお二方を置いた。

親指地蔵さんはまっすぐに私と目が合う。
もう一方の薬指地蔵さんとは目が合わない、
上を向いているのです。

仙台に出張されたまっすぐに向く鑑真和尚のお姿を拝顔して
泣いたことがあった。
坐像の神々しさ、苦難の日々の重みに
大勢の人が見入る中、
「なんとか、生きよ」
和尚は低く言ったような・・気がしたが、
所詮、
こちらが聞きたい言葉を聞こうとするのかもしれないです。
勿体無くて、頭を下げて手を合わせた。

Sさんの薬指地蔵さんは
上を向いて、私とは目を合わせない。

「空を向いて!」そうおっしゃりたいのでしょうか?
出窓を開けて、真似して冬空を見たりする。
隣の、親指地蔵さんが
「空はどうですか?」
私を見る。

いいもんですね。
「そうでしょ」
上を向く、薬指地蔵さんは何もおっしゃらない。

いいコンビのお二人は
どうやったらこんなに汚くできるの?
誰もが言いたくなるような私のだらしない台所に
「もう少し、きれいにしたら?」
そんな
文句もおっしゃらない。

空を見るお地蔵さんに
つい、私も朝に夕に
真似て空を見る。

下を向かずにすむ。
うなだれずにすむ。
文句も言わなくてすむ。

Sさんの
心尽くしのお地蔵さん・・・
出窓のお地蔵さん・・

こんなところにようこそ!
朝の挨拶が今年からひとつ、
増えた。
歩けば、空を見ることも多くなった。

花でもぬいぐるみでも
そこに誰かがいるというのは
いいもんです。
まして、小さなお地蔵さんが家にいる・・・なんてね。

この間、
地蔵様を酒の相手に!と出窓からテーブルに場所を移して
より近くにおいでいただいた。
なんと、
上を見ていた薬指地蔵は私をしゃんと見上げるのだ。
合わぬ目がしっかり合ってしまった。
どうしよう!

テーブルに置いてみれば
私が見下ろす格好だから視線が合うのだ。

位置ですね。

小さなお地蔵さま、お話してもよろしゅうございますか。
「きっと、親は、子供が小さければ、こんな風に
目線は上だからあれやこれやというんですね。
子供が大きくなれば
それまでの目線では親子といえど
違ってくるんでしょうね。
それはいいことなんでしょうが、
私はどうも、
目線って
年齢関わらず
下から見つめられるって
ドキドキしますんです。

年端のいかない子供だって
同じ位置ならまだいいですが、
下から見つめられると
落ち着かないんですね。
しゃがんでしまいます。

見上げた方が気が楽なんです。性に合うようなんですね。
臆病なんですね。

夫が言っていた、Sさんのお地蔵さまを作るきっかけの言葉を思い出しました。
『親が逝って、日一日と私も会える日が近い。
お地蔵さんを作りたくなった』そうですよね・・

Sさんも私も100年も生きないでしょうし、彼岸のことを思うと
御仏が・・・慕わしく思えるのはわかる気がします。

さて、お地蔵様に見上げられると困ってしまいますので
お二方には元の出窓に戻っていただきますね。

そう、そう、
やはり仰ぎ見るほうが落ち着きます。

本当は『先生』と呼ばれるのも苦手です。
できれば、玲子さん・・と呼ばれたいですが、
(一度、卒業生のMちゃんが冒頭に『玲子さんへ』・・
卒舎式の後、手紙を書いてくれて、
そう呼ばれたいなんて一度も言ったことがなかったのに・・うれしかったですね。
この間、会いに来てくれてお礼を言いましたんです)
でも、
『先生』と呼べる人はほしいのです。あのほっとする響きはいいですよね。
そっか。
誰かがいくつになっても夫と私を『先生』と呼ぶ時、ほっとするなら
余計な希望は言わなくていいですね。お地蔵さま」


私の家に去年の暮れから地蔵さまがいます。
それもお二人。
一方通行の話を聞いてもらっています。
不躾にも,
ほどよく見上げるところにいらしていただきたく、
焼酎のビンにも、ポットの上にもキムチのビンにも乗っていただき
酒の相手をしてもらっています。
「なんの、なんの」と許してくださる(聞きたい言葉を聞いているのですが)
申し訳ないほど気さくな「ありがとございます!」のお二人です。
Sさん、いい方々にいらしていただきました。

今北玲子

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2009年1月19日 20:38に投稿されたエントリーのページです。

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