3月9日
卒業生のK君が1歳の子どもを連れて教室に訪れた。
塾で知り合って結婚した二人に3人の子どもが生まれたのでした。
今日は3番目の子を連れてきた。まだ、人見知りで、私を見て横を向く。
でも、教室の色とりどりの飾りの紙テープには笑った。
教室の床に寝転んで天井を見ては笑う。
「この子はこういうの好きなんですよ」
K君は子煩悩ないいお父さん、3人のどの子もお父さん大好き。
はいはいして、父親を探し、いると安心して笑って、笑って・・・
そんなに楽しいの?
私も1歳の君と
天井に飾った赤、黄、青、白、緑の風船や紙テープを眺めた。
去年は
卒舎式の祭りの飾りはすぐに・・撤去したが
今年はそのままに置いて喜んでもらえてよかった。
1歳の君はお気に召したらしく、天井を見てはよく笑う。
「まだ、おいでですか?」聞いてみたくなる。
八百万の神々の中には
人集まるところ、ひょいと覗く神さま、いたりして・・・
神社には国つ神、天つ神、担当の神おわすから
そこにはおいでなされぬが、
人が集えば、人咲く、笑顔が集まるから・・・
群れる人に交じりたがるちっちゃな神さまいるような気がして・・・。
人集まれば花咲く、
古事記では咲うと書いて
咲(わら)うと読む。
「いる?」
神さまを見つけて笑っているような、1歳の君に聞いてみた。
にっ、と笑って、おぼつかない足取りで天井を見、
転んだ拍子にひっくり返ってまた、天井を見る。
天井におわしますか?
「おー、飾りがあるからまだおる!」
なら神様、
この子の母親、
私たちの卒業生のSちゃんが明日は手術です。
事なきよう、ついて行って
この家族を守ってくださいまし。
コピー機のあたりで1歳の君はまた笑った。
「そちらにおいでですか。お願いします」
翌日、「先生、ご安心を」
K君から連絡が来た。
手術は無事に終わり、あとは快方の日々を養生すればいいとの事。
Sちゃん、 よかった。
子どもたちの横に「何でもいいなはれ!」ちょこんと座って、小袁治師匠の一席に大咲いする、
落語好きの式神さま、またのお越しを・・・
3月14日
中三のMちゃんのお母さんから
「玲子先生に会いたいんだけど・・・」
約束してお目にかかった。Mちゃんも一緒に来た。
「泣く泣くいやな高校の制服を着なきゃならなかったのに、
ここまで成績を上げてもらって。」
きれいなお母さんの目からぽろぽろと涙が落ちた。
「わかります」
「せっかく勉強するようになったんで、引き続き、高校生クラス、お願いします」
喜んで・・
その夜、
塾を出たら最近入ったのNちゃんのお母さんと会った。
「よく会いますよね」
「ご縁があるのですね」
冷たい風が・・・
「寒いですね」
「本当に」
「Nちゃんは塾に慣れたように思いますね。笑顔が見れますよね。私、Nちゃん大好きです」
「そうですか、ありがとうございます。先生のブログ見てますよ」
あらら、すみません、頭を下げながら
この画面をご覧の皆様にも「恐縮でございます。ありがとう存じます」
さてもさもない、独り言ですが
正直に
生きたいなっ。なんて・・思っておりますんです。
3月15日
二組のカップル。
アシスタントだったMちゃんが結婚するという。
婚約者を連れて教室に来た。
誠実な好青年・・・5月の披露宴の招待状をいただいた。
Mちゃんは八木山に住んでいた頃のご縁で、大学4年間アシスタント。
穏やかで聡明で優しい女性でレナが大好きな先輩で、私も夫も頼りきったアシスタント。
行きまっせ。あなたの花嫁衣裳を待っていましたから・・・。
もう一組は
開塾前に私立中の非常勤で初めて教壇に立ったときの教え子。
あれから30年・・恋愛、結婚、出産、子育て、ことあるごとに
電話をくれて・欠かさず、年賀状も・・
Yちゃんの丁寧な付き合いでつながってこられた。
夫の仕事で仙台を離れるので家族で挨拶しに来た。
ご主人は鷹揚で包容力のある方で思わず、
「ご主人についていきなさいね」Yちゃんは大きくうなづいた。
娘のRちゃんがかわいかった。
二組のカップルの
二人の男性は
愛する婚約者の、妻の、お世話になった先生に自分も一緒に行く。
あったかいことね!
Mちゃん、Yちゃん、あなたたちの気持ちもあったかいこと!
幸せにね。
3月24日
卒業生のK君が来た。中三の授業は新高1として3月まで高校の勉強やら、
たまにはゲストを呼んだり、している。今日はK君がゲスト。
K君は15に泣いた。その後、東京の難関私大に進学、
ずっとずっと心にあって
会いたかった、特に15歳の子どもたちに話してほしい卒業生の一人。
都合つけて二つ返事で教室に夕方来てくれた。
「高校生をどう過ごしたか。オレが聞くから質問形式で・・・」
「わかりました」
K君は15の春休み、大手の春期講習に行き、
高校時代は英字新聞を読み、寝転んでも辞書を開いたこと、
どう15から18まで過ごしたか、話してくれた。
今はやりがいのある、仕事でばりばり生きている。
終わり近くなって
「皆さん、何で勉強するのか、言えるかな?」
K君が質問した。
言えるわけもなく、教室はしんとした。
「関係のない勉強のようだけど
僕はそれは社会に出ていろいろなことを判断できるように(だと思う)
ある時期に詰め込んでも勉強した方がいい。、
僕はここで今北先生に教えてもらったことを軸にして枝葉が広がったし・・・・、
もし、皆さんの家が大学に行ってもいいと言ってくれるんだったら
より長く勉強した方がいい。やりたいことがあればそれでもいいですが、
(若い人は)今しかないって、言うjけど、
(僕は)今しかできないことは勉強だと思う。
勉強してください。」
K君の高校時代の猛烈な勉強を私たちも初めて聞いた。
「今北先生、もう一言、いいですか?」
「いいよ、なんでも」
「月並みですけど、皆さん、
こうなりたいと思ったらあきらめないでください。
あきらめたらそれで終わりですから。あきらめないで」
ありがと!
「玲子先生、脅かしすぎましたかね?」
「いえいえ、とてもよかった」
中三の女の子がチョコを差し出した。
「食べてください」
「先生、いい塾生ですね」
高校は関係ない、どこでもいい、勉強はしろよ。
自分もそう思ってがんばった。
あきらめたらそこで終わる。K君の激励は過ごしてきた自分そのものだった。
「あなたの話を私が15のときに聞きたかったな」
「いえいえ」
K君は謙遜したが、そう思った。
(K君へ・・・感動して夢中であなたの話を聞きました。覚えている限りのあなたの言葉ですが、もし、食い違いがあったらごめんなさい)
その夜、
「オレが言っても通じないことをあいつが言うとわかる。やっぱり、
人の話を聞かないと分からないよな。その人が生きてきたことを聞くって・・すごいな」
ほんとに!夫に同感。15のみんなに紹介してよかった。
さて、4月ですね。
どちらさんも
元気にいきますか!
今北玲子