卒業生の皆さんにはたまに通信をお届けしたいなと思う事があります。
夫の手書きの通信はブログに転載できませんが、最近書いた私のものならと思いまして。
小学校から通っていた皆さんは覚えていますか。
「いろいろ・かるた」
野菜、魚、ことわざ、四字熟語のごちゃごちゃかるた。
今も小学生にかるたは人気です。4時半に授業が始まって、
「あと何分でかるた?」
「何時頃、かるた?」
ちゃんと勉強してからあとで言います。
5時を過ぎるとまた、「あと何分?」「何時頃?」
南瓜、糸瓜、俎板(まないた)向日葵、百足、
(私の好きな)麦酒!なんて言ったりして......
最後に残すからでしょうか。
相変わらず、一番人気は「木乃伊」(ミイラ)「土竜}(もぐら)
あの時間は私も楽しかった。今も楽しい。
何枚とった? ああ、負けた。
「あのね、この時間は......」私が言う前に、
「わかってます、勉強です」
「勝った負けたではない、そうでしょ、先生」
そうです。
以下、そんな最近の国語の授業の様子を塾通信に書いたものです。
懐かしくお読みいただけたら嬉しいです。
(11月号通信より)
「小学生の国語の授業」
夏休み以降は十月まで二カ月、漢検の準備で漢字漬けでした。まず、今の実力をはかるのに、過去問をしてみます。
さて合格点に程遠い、級を下げるかどうか本人と話しあうと、なぜか下げる子はいない。「がんばります」と胸を張る。小学生はあまり無謀でなければ、希望通りにします。
忙しい中学生は言葉だけで終わってしまうことが多いものです。まして級も上になるとそれだけ難しい。
でも毎年感動してしまうのですが、
小学生はその言葉通り頑張るのです。
今年も一週間前の過去問では全員、合格点に達しました。
合格したい一心というのがあるのかもしれません。
漢検のお知らせの後に決まっていうことがあります。
「この塾では小学生の合格率は百パーセントです」
エーッ、それってプレッシャーなんだけど。
「なぜだと思いますか」
......どの子も首をかしげる。
「小学生は一生懸命にやるからです」
なあんだ、でも俺はムリ、ムリ。
そう言っていた子もやり出す。たしかにやらない子もいます。
「試験は小学生であろうと年齢は関係なく真剣に受ける、精一杯やって受けるもんです」と言ったこともありましたが、
結果はどうあれそれぞれに充分に力はついたよう思います。
○小学二、四年/三十分以上も勉強をするとくたくたになるようで、休まないと集中できなくなるんです。
一口菓子でも食べて、後半のためにちょっとした休憩は不可欠。この時間が楽しい。
授業の始まる前もそうだが、学校の出来事を一つ二つ教えてくれる。お父さんになになにを買ってもらったこと、時間がなくて給食を食べ残したこと、今日だれそれ君が担任の先生に怒られたこと。学校は疲れる......ということ。会話に一日の様子が見える。
休憩後は勉強すればかるたが待っているから二人ともやる気が出る。時計をひっきりなしに見る。
授業が終わって帰るとき、卒業生の二世T君の挨拶。これがまたうれしい。できれば塾生全員に聞かせてやりたい。
帽子をとってさっと一礼、ありがとうございましたーっ。
教室に響き渡る澄んだいい声。私に元気が出る。
○小学五年生/人数も多く、それも卒業生の子どもたちが多くいる。親の顔が重なる。
子どもと親は違うものですが、でも面影はある。あのとき中学生だったのに母親になったんだ。ふと感慨深くなります。
皆さん、いいお母さんに、いいお父さんになりました。
なんの話からか、クリスマスのプレゼントが楽しみという話になった。つい「サンタクロースはいると思いますか」聞いてみた。いると思います。いません、あれは親です。
では「妖精はいると思いますか」わかりません。
ついでに「座敷わらしはいると思いますか」
なにそれ知らない。いるいる、見たもん。あたし。
「座敷わらしと会ったのならきっとあなたは幸せになりますよ」
いいな、いいな、あたしも見たい。
何かで読んだサンタクロースの話をした。
「サンタクロースはソリには乗っていません。
煙だからです。
どんなところからでも入れて、一晩が一年分の時間を持っていて、信じる子どもにだけやってきます」
うそだー。あたし、信じてみる。
授業を変更した。
「こんなふしぎなことがあったらいいな」書いてみませんか。書く書く。いい作文ばかりだった。
(かわいい女の子がにこっと私を見た、座敷わらしを見たというKちゃん。私も信じます)
(妖精も座敷わらしもUFOも見たことはないけれど会ってみたい。Nちゃん)
(本当にあったばあちゃんの話、家に犬が入ってがりがりと音がして畳が荒らされた。ばあちゃんがそれを見て、これが本当の座敷あらし。Y君、うまい!)
(妖精座敷わらしサンタクロースに会えたらいいです。子どもの頃にいろんなふしぎを見つけて友だちに自慢したいです。Y君)
(サンタクロースの写真をとることに成功した。サンタクロースはデタラメではありません、Kちゃん)
(朝一番の水を西に置くと助けてほしいときに助けてくれる妖精がいたらいい。K君)
(家族が悩んでいるときに悩みを聞いてくれる虫が欲しい。なぜほしいか。それはお父さんの単身赴任が決まってお母さんとの二人暮らしが始まるから。お母さんのことを心配している、Y君)
中には不思議おとぎの世界を、はなっから嫌う子もいる。でもそういう子も耳を貸さないわけではない。
お天道様もお月様も風も雨も神様で、国中の八百万神を信じればそこに不思議は起きる。
妖怪辞典があるのも妖精辞典があるのも、きっといたんだと思います。今もいると思います。
世の中が変わってしまったから身を潜めているのかもしれない。
もしかして木の陰からあなたを守っている妖精がいたり、かわいい座敷わらしに会うことだってあるかもしれない。
ドラエモンやゲゲゲの鬼太郎はそれを信じた大人があなたも信じてと願った作品だろうと思います。
次の国語授業の日に「先生、また作文書きたいですー」座敷わらしを見たという、Kちゃんが言った。
○小学六年生/少し大人です。中学になる前に品詞を今勉強しています。物の名前が名詞です。わかってくれた。
動詞、形容詞、形容動詞もちょこっと。「悲しい」この形容詞に「さ、み」をつけて悲しさ、悲しみ、こうなったら名詞になります。
そこで混乱。
じゃあ、悲しいのさ、悲しむのさ、名詞になる?
それは形容詞と動詞に助詞がついたのです。
言えばますます混乱しそう。来週もう一度ね、名詞に「さ」ってわかんなーい。なんだかごちゃごちゃするー。
そうですね。話を変えましょ。
「悲しいと言えば、あまりに悲しくて死の国、黄泉の国に行ってしまったイザナギを知っていますか」
知ってる。本の好きなH君が言った。知らない、なにそれ。
それでは古事記から。
イザナミ(妻)を失ったイザナギ(夫)が黄泉の国に会いに行く。あちらの食事をとってしまったから現世の姿はもうない。
見るなと妻が言うのに見てしまう。
怒ったイザナミ(妻)は、よくも見たな、と襲ってくる。恐怖のイサナギ(夫)は必死で妻から逃れる。
黄泉比良坂(よもつひらさか)のくだりを話した。
H君が「僕が読んだ本にはイザナギは楽器の演奏がうまくて、悲しいからそれを弾かなくなって他の神様が黄泉の国に送ったって」
いろんなものをよく読んでいる。
これが本当の古事記ですと古典を見せた。H君「見てもちんぷんかんぷん」私もだけど。
イザナギが黄泉の追手を逃れるために大きな石を埋めたところまでかいつまんで話した。
それが今でもあります。どこ教えてください? 来週ね。
次の国語、島根県の松江市にある黄泉比良坂を紹介した。
イザナミ(妻)は、見るなと言ったのに醜い顔を見られて叫びます。
「毎日千人の人を殺してやる」
イザナギは「毎日千五百の人を産ませてやる」
それが千引きの石(ちびきのいわ)で残ってます。
汚れた身体をイザナギが洗って様々な神様が産まれて......皆真剣に聞いてくれている。
それでどうなったの? それは来週ね。
よっしゃ、楽しみだ。A君がガッツポーズ。
不思議も好きですが、意外なこと、歴史のこと、関心が出てくる年頃なのですね。推理物にも俄然興味が湧いてくる。
国語の力は教科書ではない。漢字だけでもない。
まんがも必要、映画も音楽もお笑いも、絵やスポーツや舞踊だって育む。ごった煮が国語力のような気がします。
玲子
後日
漢検の合否が届きました。
今年も
小学生は100パーセント合格。
高得点続出!昨年は満点合格が一人。
今年も200点満点中、194点、180点以上が数人
合格点140点を全員が20点30点も上回っていました。
やはり小学生はすごい!
今北玲子