これも年末のこと。親友が
「玲子の好きなあわびの肝、もって行くね、本体ないけど」
「ありがと・肝あれば」
それを小耳に挟んだ末の息子。
「お母さん、あわびって俺、食べたことない。
テレビで見たように氷水につけて食べてみたい」
「そうだった?なら、奮発して正月にご馳走しましょ」
そういえば、
こどもたちには好きなものはとことん食べさせたいと思っていたのに
末の子にはそんなイベントしていなかった。
申し訳ない。あわび・一口食べさせてなかった。
姉は5.6歳の頃、大好きなスイカ・
自分の頭より大きなスイカ預けてしこたま食べさせた。
兄にも寿司はまぐろというから回転寿司でいらない!まで食べさせた気がする。
好きなものを思いっきり食べるとそうでもなくなる。
私の祖母も母も言っていた。私も柿が好きといったら、1箱預けられた。
新婚時代に夫の喜ぶ顔みたさに頻繁にカレーにしたら
大好きな夫の好物を削除してしまった。
好物とは日ごろ食べられないものではなく、
食べ続けても飽きないものを好物という気がする。
私の好きなものは梅干。
毎日食べても飽きるどころか、ないと暮らせない。
パスタ、ラーメン、餃子、刺身、すし、私の好物・いろいろあると思っていたけど
最近本当の好物に気がついた。
ラーメンじゃなくて胡椒が、
パスタじゃなくてタバスコ・・
シュウマイのからし・餃子のラー油・・
イタリア料理店で
「うちにはタバスコ置いておりません」・・・
運ばれたパスタ見て泣いてしまおうかと思った。
お刺身の最大の友・・・
わさびがなかったから夜中にパジャマにコート来てコンビニに買いに行ったら
レジでひざまでまくったパジャマのズボンがバサッ。
わさび片手に持ってりゃ、ピンクのパジャマのズボンで走ったってなんともない。
七味を真っ赤にかけたい・うどんとそば。
そういうことだった。別解の発見は私という・憎めない変人・
料理を引き立たせる・あの気丈で
寡黙ないい奴ばっかりの香辛料が一番好きだった。
梅干は?そうだ!ご飯が好きだったんだ。
カスミソウも大好きですね。
ほかの花を目立たぬようにきれいに見せるけど、
ひとりひとりはポチッと白くて小さくて、決して集団になっても主張しなくて
ふわりと包んで恩着せない・上見て・笑って・優しい花・
私もなりたい・
カスミソウみたいな、
香辛料みたいな人・・
今北玲子
追伸
海の町に住む私の友達はあわびを沢山いただくのだそうで、
あわびをさばいては冷凍する。年末に「ハイ、玲子のおつまみ」
ひとつひとつラップでくるんで
ザクザクと数十個の肝を届けてくれる。
酢醤油にたっぷりのわさび・流水で少しとけた数個の肝をつぷんと沈め、
ビール飲みながら
はしでつついて、塩梅のいい食べごろの肝を選ぶ。
ひんやりしたゆるくなった肝の半アイス・・
おいしいです。