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ばあちゃん

1月13日結婚式
暮れに卒業生のI ちゃんがやってきた。
「先生結婚するの。来てくれる?」
「行くよ」
「本当?私、世の中のこと知らなくて、来てくださいって言ったら来てくれると思っていたけど、
みんなが来てくれるわけじゃないのね。だから、今北先生はどうかな?って」
「卒業生の結婚式は行くよ。お前の結婚式は行くよ」夫の言葉にうなづいて
行くよと私も答えた。
まもなく、招待状が届いた。
今北正史様
披露宴は招待客の双方の人数、いろいろある。夫の名で出席を出した。
年が明けて、13日のことを考えると気になってきた。
「来てもらえる?」私たち夫婦を見ていた気がする。
思い切って夫がメールしてくれた。そしたら
「いろんな人に迷惑かけるから、ばあちゃんが言っている。でも、
玲子先生が来てくれたらうれしい」
行こう!行くよ!I ちゃん・
1月13日二人で出席した。

I ちゃんは強烈な個性の中学生だった。授業中、キヨトンとしているかと
思えば、次の瞬間、大きな口あけて笑う。
心はいささかの狂いもないほど、
相手にそれは伝わる。やさしくて、屈託のないI ちゃんに父母はいなかった。
素直によく出る言葉は「うちのばあちゃんはね・・・」
I ちゃんは祖母と言わない。いつだって、ばあちゃん・
ばあちゃんのために看護師の道を選んだ。

「父も母も亡くなってそして、じいちゃんが亡くなって、ばあちゃんとはけんかもしたけど
私はずっとばあちゃんを大切に生きていきます。」
ブルーのドレスがかわいい美しい花嫁は
涙と笑顔でまっすぐに向こうに座るばあちゃんに話しかけた。
「ばあちゃん!」
飾らないその呼び方は懐かしく、切なく、みな、目頭押さえた。

ドアの前で両家お見送り。
「よかったね、I ちゃん!」
「今北先生、玲子先生、今日はありがとうございました。ばあちゃん!塾の先生だよ」
「さっき会ったから・んだがすと!」
「んだがすとってばあちゃん・先生!これだもの」
んだがすと!はそうなの、さっきお目にかかったの。
ばあちゃん、と人目はばからず言うI ちゃんの友達は大勢いて、かわるがわる
ばあちゃんのテーブルに訪れていたから
間隙を縫ってご挨拶に伺うのは難しかった。
孫の友達にまで慕われていたことが遠目でもわかる。
忘れ形見の孫を育て上げてるのはご苦労だったと思う。

私も言っていい?I ちゃん!
「ばあちゃん、いがったね・」
今北玲子

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2008年1月15日 21:04に投稿されたエントリーのページです。

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