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背中と瞳

4月に入塾した子供たちは緊張しているが、
座ると気持ちがいいほど背中が伸びている。

夫の授業をアシスタントしていると、子供たちの背中を観察できる。
背中って不思議なもので、その子の気持ちが良く見える。
やる気のある背中はひと目でわかる。
元気な背中なのだ。
張りのある背中で、後ろからのぞいてみると鉛筆を持つ手がよく動いている。
夢中で勉強している子が多い。

元気のない背中の生徒に心配になって近づいてみると
問題がわからなくて困っていたり、風邪を引いていることがわかったり、
部活でくたくただったりする。

瞳も・・・
入塾したばかりの子供たちは瞳に星が飛ぶようにきらきらしている。
中1のクラスは特に
きらきらのきらきら、
まだ、小学7年生といってもいい。
あどけないが、
中学生になって、初めての塾で
夫のちょっとした冗談にも、
瞳も背中も元気にドッと弾んだ声で笑ってくれる。

中2は気を引きしめる子供たちが多い。
背中が、やるぞ。

中3は受験モードにはまだだが、
背中は
顔があるのではと思うほど、個性が出る。
志望校が決まっている子はめらめら炎が見えるし、
まだの子も、この1年
がんばるぞっ。

春の教室はどの子もやる気でみなぎる。
この子供たちの
背中と瞳が
丸くならず、うなだれず、
濁らないように、
毎年、思う。

私の背中は誰が見ているだろうか。
塾の子供たちもご近所も
さらに、もっとみんなに見られているのでしょうね。
玲子先生、元気ないね?
たまに目ざとい人は背後から尋ねる。

しょぼい背中にならないように
気合入れて・・・

中3の子供たちは4月も半ば、夫にがつんと叱られた。
宿題をしてこなかった生徒がぞろぞろ。
「受験を甘く見るな。してこないんだったらプリントを持っていくな」
全員、望みだけではなんともならない怠惰を打たれ、
がりがり、鉛筆を走らせていた。そうなのよ、何もしなけりゃ、何も生まれない。
がんばれ・

「ただいま」中3の息子が帰ってきた。

「ねえ、お母さん、今日はお父さんの雷落ちたね・・
中3にもなってちゃんとプリントをやっていかなかったから」
しかられたうちの一人の息子は笑いながらも、落ち込んで見えた。
「そうだね」
さっきまで教室にいたからわかるよ。

他のご家庭の子供たちなら「塾、どうだった?」
「まあまあ」
塾の息子は父に怒られ、母が後ろで見ている。
一足先に帰ってきた私に「ただいま」って言ったって
具合悪くなリますよね。
気の毒だな。

ジュース飲む?
うん、ありがと、
の、代わりに私に放屁。
「こら、ちゃんと言いなさい」言ったけど、
内心、それもよかろう。
たまったもんじゃないよね。
何でも出せばいいってことよ。

「私の母の小話だけど、教えたったっけ、言ったっけ?」
「なに?聞いてない」

あのね、話していい?
うん、

・・・母ちゃんと小さい息子がいたんだって。
道で母ちゃんが誰かと立ち話。
母ちゃんがプッ!
母ちゃんは人前だったから、恥ずかしくて
「なんだべなあ、あんだは、こいなどこで屁こいて
おしょすさま、だこと」(おしょすさま・・恥ずかしいこと)
・・・息子のせいにして、叱ったんだと。
ごつんと小突かれた息子は・・・・
母ちゃんのすそ引っ張って・・・・
「なあ、母ちゃん」
「ん?」
「なんだべ、早く言わい」
・・・・・・・
「母ちゃんの屁も俺の屁か・・・」

息子は柳原可奈子みたいに
「なにそれ、受けるんだけどーー・・」

よろしゅうございました。
息子の笑顔、
笑うと背中と瞳がつながる気がした。

尾篭お許しを。
今北玲子

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2008年4月24日 19:24に投稿されたエントリーのページです。

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