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初ライブ

1月2日の新年会で
「CDを出したけど、やっぱりライブですよね」
「教室でやる?」
「いいですか?」
「いいよ」
「誰に聞かせたいの?」
「身内で・・・先生のご家族とか、Kちゃんとか、Mちゃんとか・・・」

M君との約束を請合った以上、守りたいもので、
8月には入って、
夫にあの話、連絡してもらえないかな?

こういうとき、夫は手際よく、
セッテッグしてくれる。

間もなく、連絡終えて、確定8月15日、
ただし、親友のK・M君は同窓会と重なり、もう一人のM君も欠席。
盆は忙しいね・・・
里帰りのKクン一家と我が家全員で聞こう。
そしたら
同窓会会長のN君、帰省で飲みたいという1期生M君にも混ざってもらって。
前日、この間、3人で飲んだこれまたイニシャル消防署のM君にばったり、
夫が誘うと
参加するというので、(その後、M君のお兄さんと友達が入って)
観客16人の
15日、
M君初ライブ・・・

思えば、8期生の面々にはご縁を通り越して、お世話になった。
初ライブのお父様にも忘れ得ない人情をいただいた。

21年前。
ほくそう舎に入塾者は殺到して、受け入れる椅子も机もなくて、大勢断った。
その後、断ったうちの一人、その子の消息を夫は耳にする。

中学の教師になぜか、袖にされ、ハブにされ、
理由はその子の家庭環境にあるとか、(理由はわからないが)
夫が聞いてきた。

夫はその子の家を訪ねた。
「入れますから。」
一度は断ったのに、わざわざ、言いにいった。

喜んで、その子は入塾した。
そして、しばらくして学校で教師に前歯を折られた。

塾の緊急保護者会を夫は開いた。
学校でもないのに、余計なことだったかもしれないけれど、
「どう、思いますか?」
夫は塾生のご父兄にたずねた。

塾が何をしたって、学校に届くはずもないのに、
塾に解決策はないけれど、これもご縁のご父兄とみんなで考えてみたかったのだ。
夫は必要だ、と思ったのだ。

間もなく、事件をマスコミがかぎつけた。

新聞に大々的に
「体罰」
教師の暴力が活字になって、
活字が世間を走った。

父兄はそれこそ本物の学校の緊急保護者会に集められた。

我が家の電話は鳴りっぱなし。
夫が開いたあの塾の保護者会が問題となっているのか。

「あの塾が新聞社に学校を売ったに違いない」
そういうことだったのか・・・
朝から、
受話器をとれば、
「バカやろー」
愛校精神はダイヤルを回すくらいなんでもなくて、
体罰より、わが子の通う学校が
新聞沙汰になった事の方が重大らしい。
鳴り止まぬベルに耳をふさいだ朝、
ナンバープレートが出ないあの頃、
どれが緊急で、どれがいたずらとも分からないので、いちいち受話器を耳に当てては
ため息をついて、受話器を置いた。

りりーん。
又か。
受話器を取ると、
「Tでーす。」
M君のお父さん・・・
聞きなれた声にほっとした。
「保護者会があるんですが、先生、
もし、誰か、先生のことを言ったら、手を挙げていいますから」
「先生、塾のことを悪く言ったら言いますから」
「先生、ちゃんと塾は悪くないって言いますから」

今はどの順番が正しい内容か、定かでなくなったが、
どれも、真実で、
M君のお父さんの声は以来、耳元で3つとも共鳴する。

受話器を持って
「そうですか」
泣いた・

その息子がM君である。

忘れはしない。。
マスコミの恐ろしさ、報道されれば、誰がニュースソースか憶測でしかわからない、
庶民が疑われる怖さ。
誰に
誰に分かってもらったらいいのだろうか・・

1本のM君のお父さんの電話は
私と夫に
「きっとわかるひとがいる・塾はつぶされない」
M君のお父さんの明るくて、
今北先生、心配しなくていいからー・・オレが言うから・・
「ありがとうございます」
「先生、大丈夫だから・・・」
M君のお父さんは受話器の向こうで元気で明るかった。
心丈夫・・とはこういうことだろうと思った。

M君は1点差で第1志望を逃した。
申し訳なくて、申し訳なくて・・・
その時、お父さんが挨拶に来て言った。
「うちの息子は1点差、よくやりましたよ。先生。すごいですよ。
褒めてやってください」

人情は突然、そこに花咲くのではなくて、
その人にこそ咲く花ではなかろうか・

私たちは生涯忘れない・・、

これからも塾をしてもいい?
M君の父さんが
やってもいいさ・・今北先生。
握手してもらった気分で・・

人は人の心で生きていける。

M君のお父さんは職人で生きてきた。
腕があれば、先生!
誰がなんと言おうと、子どもをつかむ腕ですよ・・
私はあの電話をそう思った。
なけりゃ、だめですよ・・
ですよね・・・

M君のお父さんは
誇り高いけれど、小さいことに、こせこせしなくて、
あはっはっ、と私たちの前でよく笑った。
それに
明るいお母さん、
M君は
塾のアシスタント、
突然、大阪に行くと言って新聞配達、
「ちょっとさびしくて・・」
戻ってきて、
魚屋、
農業、
そして、今夜の初ライブ、ピアノライブ。
自由に生きているなっていつも思う。

さて、ライブが始まる段になって
「おい、(ライブを開いたりして)
君は何をどうしたいのか」
同級生のK・M君が言った。
「そりゃ、、皆さんに聞いていただいて・・ええ・・まあ」
今夜の主役は照れて笑った。

なんだかんだ言いながらデザイナーでその親友のK・M君は
一日限りの素敵なポスターとプログラムを用意していた。
8期生は言いたいことを言って、
てんでに面白い。
「手に汗、脂汗・だよね、君だけでなくて、こっちも」デザイナーのK・M君
「君より、こっちが緊張するよ。心配だよ」Kクン
友達はいいね。
ポスターは
CHERRY MAN・・LIVE 2008
おしゃれで素敵なポスター。センスいい!
ピアノの足が取れている。親友の愛嬌。

持つべきは友達・・
そして、M君のお兄さんは記念写真にとるために連絡あるまで、
待機しているという。
持つべきは兄弟。
ピアノは習う年齢がある。
大人では手が動かないのに
よく、練習したものだと思う。

すごいです!
楽しいライブは16名の盛大な拍手で終わった。

飲んで喋って笑って
さて、最後は、
出世ゲーム・・をやろうと夫が言い出し、
卒業生同志の出世ゲームは
皆、卒業生だけにハイレベル・・
手拍子がハヤイ・・ハヤイ・・

アルコールが入っているので、
制御が利かないけれど、
残った三人、
同窓会会長と里帰りのKちゃん、三男の息子。
いつ、誰がミスするか、大人同士でもはじめれば出世したくなるもんですね。
意外に興奮とスリルの一興・・・でした。

毎年、
里帰りしてくれる、卒業生同志で結婚したM君一家、
(勝手口に9歳と5歳と8ヶ月を抱いたあなたたち)

いつのまにか5人家族になったのね・・
はい、いつのまにか・・5人になりました・・

長女の賢さ、次女の賢さ、まだ、8ヶ月でも長男の頼もしさ・・・
8月15日、4時45分、
Kクン一家の5人に
北仙台の名物の夕焼けがまだ浅く、青く、
五人の背中を照らした。

今夜も私とKクンの子どもたち二人は
手をつないで、
お決まりの恒例の西友で
「何でも好きなものをどうぞ」
買ってあげた。たいした買い物ではないけれど、喜んでくれる。

「ねえ、あなたたち、こんなに玲子さんに買ってもらって、頭、真白じゃない?
よかったねえ。玲子さんにありがとした?」
「うん」
Sちゃんはもはや、堂々とした3人の母になって、
「玲子先生が初めての子の時、
どんどん生みなさいよって言ってくれたの。
あの時はこうなるとは思わなかったけれど」
(私の娘にも、どんどん産みなさいよって言ってくれたんだってね、
Sちゃん、ありがと)
ようございます。
親に育ててもらった恩返しは、自分も子どもを育てなきゃね。

来年は
Mちゃんライブ2回目と、思います。
楽しみです。

夏は卒業生と
どんどん、飲むのでございました。
今北玲子

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2008年8月16日 19:39に投稿されたエントリーのページです。

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