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誕生日

娘の誕生日、
「もう大人だから・・何もしなくていいよ・・」

娘が言うから、
そうね、大人よね・・

何もしないで
夕方家に帰ったら
テーブルに咲くカスミソウ・・

「自分で買ったの?何もしないで・ごめんね」
花さえ、自分で買ったのかと思うと申し訳ない気がした・・

「違うの、お母さん、
私を産んだ人にね・・」

私の好きな
カスミソウ・・

産んだ人ですか・・
なんだか、すみませんね・・

井上光晴・・
直木賞受賞の長女井上荒野が7歳の時の述懐。
「小さなランドセル背負って
『行って来ます』て
学校に行ったんだ。
それを見送ったら
この子が
これから生きていく長い人生の途上で
苦労する数々のことを思いやって
可哀そうになって泣けてきた。」

塾に
学校帰りでランドセルを背負う子は汗だくの夏の日にも、
寒ーい!の冬の日にも、
愛しくて。

背中のランドセルは・・
親なら、
可愛い背中の持ち物は複雑です。
ランドセルがもたらす、
成績、将来・・。

確かにわが子の成長は嬉しいけれど

ランドセルの代物には
暗雲も希望もつまって見える。

母乳を飲まないだの、離乳食を食べないだの、
なんのかんの、そんなこと・・
ここまで育った恩など、きれいさっぱり忘れる。

ランドセルを子どもが背負う時、
一抹の不安がよぎり、
一縷の望みが広がる。

7歳の子に背負わせたのは
国だか、
親だか。
これから大変だよって、声がしたのを思い出す。
嬉しくて、
不安で
その後姿に・・
つと、泣いた気もする。
わが子がかわいそうで泣いたって気持ち、あった。


娘が
「おかあさん、おやすみなさい・,ありがとうございます」
毎夜、私に
深々と
頭を下げて
一礼して部屋に引き上げる。

しつけたわけではない。
どこで学んだか。
問うこともしないでいるが、・・

産んだ人ですが、
あなたの誕生に力を貸しただけで
礼には及びません・・

娘が私の前に生きている。
むしろ、どなたかに一礼、しとうございます。

ランドセルの
親の夢・不安・
所詮、
子どものも持ち物は
お互いの故郷みたいなもんです。

娘の就寝の一礼は
ランドセルを終えたからこそ
ありがたく思えるのだろうか。

わが子がまだ、ランドセルの
塾生の親の皆様、卒業生の親の皆様、

いつか昔・・
重かったランドセルを背負って
何とか生きてきたことを
思いだしますよね。
そうやってここまでなんとか生きてきた。

どなたかに一礼しとうございますね。

カスミソウが
そうなさいまし、

ぽちっと
花々
大勢で
私を見る。

産んだ人・・
やはり、それは
たいしたことではないように思うけど
ランドセルを背負っては、制服を着ては
どっかこっか、心配ばかり・・・だったような気がする。

今日の誕生日の長女の時、
力が弱い気がしてその夜、眠れなかった。
次の日、
先生が「心臓に欠陥があります」
「命に別状はないんですか」
「ないです」
それならいい。
生きていればいい。
その後、自然治癒して元気になった。
気持ちはさっぱりとした青空になって嬉しかった。

誕生日に産んだのは私だから、あれやこれやと誕生の話をしたくなる。
毎年、同じ話でどうかと思うけど、何度も話したい。
陣痛がいつ始まって、いつタクシーを呼んで、
いつ、生まれて・・・
話したくなる。

聞いてね。あなたの生まれた日のこと・・・

この子が生きてほしい、ずっと生きて、祈ったこと。

無垢な
小さな身体を抱いて
アリガトウ、を連呼したこと・・

今北玲子

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2008年9月28日 00:25に投稿されたエントリーのページです。

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