た・ま・ご
たまごを割った。
あら、黄身が二つ。双子です。
小さなカラに二人で入っていたのね。
割った殻をなでたりして。
次の日、夫の昼食のうどんに卵を割った。
あら、また双子ちゃん。
「おれ、たまご二つなんかいらないよ」
「双子ちゃんです」
珍しいな、ほんとに、双子のたまごが続くなんて。
たぶん、数年ぶり。
それから、毎日割って
驚いた。8個までが双子。
もしかして、このパック、全部双子ちゃんだったりして。
その夜、9個目のたまごを興味津々で見つめた。
あなたもふたご?
違った。
大きな黄身がひとり。
人生、予想通りにはいきませんよね。
はて10個目、どきどきする。
これが双子なら、
昨夜割った9個目の
「ひとり」のたまごが気の毒。
パックの皆さん、双子ですもん。
パックにひとりだけ、なんてかわいそうにのう。
さぞ、肩身が狭かったろうに。
どこでもどんなときでも
ひとりだけっていうのはかわいそうだ。
残るはあとひとつ。
双子か、ひとりか。
どっち?
目をつぶって最後の10個目を割りましたです。
おお、
堂々のひとり。
いるんですね。
仲間ってやつが。
気持ちをわかる奴がひとりはいるのでしょうね。
ひとりになると、もうひとり、きっと、どこからかやってくる。
信じたくなります。
今北玲子