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雑感

中3の英語、夫が、ひとりひとり当てながら長文の和訳の授業をしていた。

誰かが、そっけない訳をしたらしい。

「これはさあ、恋なんだよ。わかるか。

淡い恋なんだよ。お前たちは恋をしたことあるのか」

 

横にいたアシスタント二人と苦笑した。

つい一言。

あるでしょ。でも、みんな、誰も言わないだけよ。

「(玲子さん)......いたのか。まずい。これから俺の初恋を話そうと思ったのに」

さいですか。

「ではお暇しまーす。存分に話しなさいまし」

 

教室を出ました。いい気分です。

外に出ると真っ向から北風ですが、夜空には星がひとつ。

誰にでも初恋はありますよね。

淡く切ない、なかなか消せない想い、

でも月日がたち、初恋だったんだ。

そう、人に語れるようになったら

なんとも懐かしく

「初恋」という星のごとき、

つんと高貴に、脳裏のはるか過去に光っている。

 

夫の初恋に嫉妬するほどでは、ないですが、

子どもの頃、

両親が運送業をしていた時分のこと。

運転手さんが

小学生だった私の頭を両手で捕まえて、

「好きな人はいるか、いるべ?」

「いないもん」

恋の真っ最中の小学生は言えない。

「うそつけー」

見抜かれる。

「俺はいたぞ」 

初恋は、

いつか誰かに話したくなるものなのでしょうね。

「どいな人?」

聞きたかった。

四十も過ぎたアルミの弁当の白米を頬張る運転手さんの

めんこかったなー!

息を飲んで

うっとりして聞いた。

 

さて、私が教室を出てから

中3の生徒が

どきどきして、うっとりする初恋を

夫はしたでしょうか。しましたね、きっと。

西友で牛乳を買って、北仙台駅を通り過ぎ、

夜空を見上げた。

 中学生に恋の話は

いいと思います。

 

夫の初恋は知っているつもりです。

淡くやさしく、夫の心の片隅にいる「初恋」と名乗る少女、

いつ聞いても

夫の初恋、は私、好きです。

少年の恥ずかしさ、真面目さにあふれている。

 

卒業生の皆さんは

知っていますよね。

あれはいいですよね。

知らなかったら、夫に

「ブログを見たんですけど、先生の初恋って?」

夫が

言うか、言わぬかは、

一期一会でしょうか。

 

淡い恋を思い出すたび、

その横におどおどする自分が立っている。

思い出すとかわいそうで、抱きしめたくなる。

恋は一つじゃないからって言ってやりたくなる。

 

あらっ、もしかして、

初恋をあっさりと越えられたのも

未来の私が「次に行きなさいよ」

手を振ってくれていたからかも。

とすると、今も、

つらい時、悲しいとき、

「なんと生きなきゃ」

ふとつぶやくのは、未来の私が

(なんとか生きるんだぞ)

懸命に話しかけてくれているのかもしれない。

中3の皆さん、

未来のあなたの声が心に届きますか?

「勉強しろよー。苦しくともあと少しだ。諦めるな。精一杯やるんだぞー」

未来のあなたの声は

親の声にも

私たちの夫婦の声にも似ていますよ。

REIKO

 

 

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2012年1月10日 21:32に投稿されたエントリーのページです。

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