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お母さんと一緒。

日曜日の国語の授業中、夫が

「わざわざ来てくれたよ、早く」と駆け寄ってきた。

思わず、教室のドアに目をやると1期生のTちゃん、その娘の高1のYちゃん、

フアックスでもメールでもよかったのに、

お願いした今年のちらしのコメントを持って来てくれた。

1期生のTちゃん、

「玲子先生、ずっと来ようと思っていて、なかなか、来れなくて。これ中3の皆さんに」

クッキーとチョコいっぱい。

 

Tちゃんのお父様にはお世話になったんです。

某病院の産婦人科のお医者さまで、患者としてお世話になって、

きりりとした、地元で評判の優秀な医師、信頼申し上げておりました。

私には、腹に育たぬ,、いえ、育てられかった子どもがおりまして、

胎児で天に召されて逝きましたんです。

その時、お父様に、お世話になって、

診療を終えたお父様のF先生は夕食時に病室に不意に現れて、

その時、私、夕膳を前にして、

(家で待つ小さな子どもがいるのだし、食べなきゃ)

決めて、丁度、箸をつけたところでした。

「さすがだ、食べてますね。食べて下さいよ。

たくさん食べて下さいよ。お大事に」

返事をする間もなく、

F先生は言うことだけ言うと行ってしまわれた。

からっとした声に救われた。

左手で持っていた味噌汁のお椀が見えなくなったけど、

ご飯を口に入れて、食べて下さいよ。はい、もりもり食べた。

やさしい先生だなって忘れられません。

その後も出産でまたも、また、お世話に。

そしてTちゃんのお母様にもお世話に。

塾をはじめてまもない、海のものとも山のものともわからない私たちに

長女を預け、妹弟も、よろしくお願いしますって通わせてくれた。

その後何人もの生徒を紹介していただいた。

塾の、夫婦の、ご恩のあるご夫妻でありました

その1期生のTちゃんが去年、

「今北先生にうちの娘をお願いしたくて」

あなたの願いは、

そりゃもう、私たちで良ければ、でした。

 

卒業生の2世は塾生として何人もいます。

「子どもが大きくなったら北剏舎だと思っていたから」

卒業生の言葉はどれほど有難いかしれません。

でも最近思います。

夫婦といえど、小中の過ごし方は当然違う。

ひとりで勉強した、大手の塾に行った、家庭教師だった、

その中で自分の通っていた塾に子どもを通わせるってことは

実は大変なことではないだろうか。

(同じ塾を経験しているのは,

塾生同士で結婚したKちゃんとSちゃんですね。

二人とも元気にしていますか?

子どもたちも元気ですか?また会いましょね)

 

すみません、もとい、

ですので、

入塾には、夫なり妻なりの了解と、夫婦の意思一致がいると思うのです。

子どもの大切な時期に私たちに預けていいかどうか。

もし北剏舎に通って、成績が上がらなかったら?

夫婦といえど気まずくはならないだろうか。

まして、子どもはどうか。

すんなり親の通っていた塾に行きたいと言うだろうか。

親の通っていた塾なんて、行きたくない。あるかもしれない。

 

1期生のTちゃんは「私が塾のことを話したら興味を持ったみたいで」

昨年、きっかけを話してくれた。

授業を受けてみてよかったら、喜んでお引き受けします、

勿論、そう言ったが、

さて、授業を受けたYちゃんの感想は気になった。

塾に入りたいって言われた時は、ああよかった!

中3のYちゃんは地下鉄を利用して、遠いのによく通ってくれました。

 学校からまっすぐ制服で塾、という日もあり、よく勉強しました。

 

無事高1になった可愛らしい長い髪のYちゃんが

ビニール袋を覗いて、

「玲子先生、下のチョコは今北先生に、早いんですけど、バレンタインです」

まあ、いの一番のチョコですね。

 開塾1期生の母と、31期生の高1の娘、

並ぶ姿は

遠い時間を思うが、

流れた時は、麗しい気がした。

 

授業中の夫を気遣って、

「今北先生はお忙しいから、チョコは玲子先生から言ってもらえば」

Tちゃんはさりげない暇を告げて帰って行った。

 

 1期生に女子二人がおりました。

Tちゃんともうひとりは、Mちゃん、

 夫が20代で生まれてはじめて教えたバイト先の

社長の息子、(ここのご両親も塾を開くのにご恩のある方)

その妹がMちゃん。

1期生の二人、共に落ち着いた、賢い

品のいい15歳の少女でした。

Tちゃんはあの頃と変わらないね。

それに、

「いい母親になりましたね」

言えば謙遜するから、無音で背中に伝えます。

 

明日は公立高校の志望校締め切り。

決まっている生徒もいれば、心中穏やかではない、悩んでいる生徒もいる。

母娘が帰った後、夫が言った。

「おい、来年はお前たちが差し入れ、してくれよなっ」

中3の心の声が聞こえます。

(それどころじゃない。今、必死なのに、来年の差し入れなんて

わかんないよ、約束なんかできないよ、今北先生)

でも笑ってる。

公立志望校の締め切り、

緊張の日、ふとした笑い声,は

 お母さんと一緒の、今日の差し入れのおかげです。

Tちゃん、高1のYちゃん、ありがと。

 

塾生には、あとほかに何人か、

お父さんと一緒、

お母さんと一緒、がいます。

塾がもとで、

夫婦が気まずくならないように

一生懸命教えますねっ。

今北玲子

 

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2012年2月13日 18:46に投稿されたエントリーのページです。

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