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あら?

一番丁に用事があって地下鉄に乗った。

空いていた席に座ると、向かいの女性がやたら,私を見る。

気になって身の回りを確かめた。

大丈夫、気のせい。

 

意外に早く用事は済み、また、広瀬通りから地下鉄に。

下りの階段は危ない。以前、踏み外したことがある。

転ばないように手すりを掴んで

下を見た。

あら!私の足?

左右違う靴、いや、サンダル。

用事はすぐに済むからサンダルでいっか。

つっかけた。

右は気に入っているビーズのつま先がある黒のサンダル、

左は夏用のビニールのつま先のない黒のサンダル。

どちらも黒だが、スカートで肌色のストッキング、

はっきし、違いがわかる。

 

世の中には親切な人はいる。ファスナー空いてますよ。

言われたことある。

でもどうだろ?

靴が違ってますよ、そりゃ言いにくい。

もしや、怪我でもして左右別々の靴が必要、なんて言われるかもしれない。

言いにくいです。

 

 知らぬが仏、よく言ったもんです。

知ったとたん、

歩くに恥ずかしく、私のことなど、誰も知らないのに

変な人、思われやしないかと赤面。

 いっそ、タクシーに乗ろうか。でも、どうしようどうしよう、とつま先見ながら、

もう随分と地下鉄の階段をおりてしまった。

またのぼって引き返して、

歩いて、フオーラスから横断歩道を渡ってタクシーを拾うには

時間がかかる。それに左右別々のサンダルごときで、

タクシーに乗るのは贅沢かと、

我慢した。

足に事情がある振りして乗っちゃえ。

 

そっか、

行きの地下鉄の向かいの女性はサンダルに気がついたのだ。

私としたことが、いえ、私としたことは結構、ある。前にブログでも書いたが、

中学生3年生の冬、

制服のスカートをはき忘れた。どうしてそんなことができるのか、

未だに不明。学校に行ってコートを脱ごうとして気がついた。

たまたま熱いだるまストーブの横の席で汗が出たが、

風邪みたいで寒いんです、と言い張った。

どんなことをしてもコートを脱ぐわけにはいかなかった。

高校時代にハードのコンタクトが痛くなって、

ケースがない。友だちが「上くちびるの下に置くといいよ。失くさないから」

早速、コンタクトを前歯の上にくっつけた。

昼休みに「牛乳、飲もっか」

いいよ、ごくごく飲んでコンタクトも飲んでしまった。

20代にも、

運送業をしていたときの運転手、鉄っちゃんを自宅近くで見かけた。

仕事をやめてから数年ぶり。子どもに優しい大好きな運転手だった。

わざわざ走って追いかけて肩を叩いた。

「ひさしぶり、この近くまで来たの?元気?」

よく遊んでもらった。懐かしくて、小さい頃のように

肩をばんばん叩いて、「うわあー。会えてよかった」

「おい、あの頃より、お前は、喋るようになったな」

「お前って名前でいいよ。でもいやだ、あの頃も喋ってたでしょ?」

「それしても、社交的だな」

「社交的ってなにそれ?気取ってない?」

じゃあね。会えてよかった。またね。もう一度肩を叩いて手を振った。

うん、元気でな。

2,3歩歩いてなんか変?

他人行儀な、別人みたい。仕事の合間にバレーボールもしてくれたし、

雛祭りの祭壇も大工さんみたいに作ってくれたというのに、

ん?

服?

振り返って、背広の後ろ姿にはっとした。

鉄ちゃんは冠婚葬祭以外、背広を着ることはなかった。

黒服じゃない。茶の背広だった。

あれは......?

そうだ!中学校の美術のK先生だ。

当時、母にも美術の先生が鉄ちゃんによく似ているって言ったことを思い出した。

なんと、恩師に対して、あの口の聞きよう、肩まで叩いて、無礼千万。

せめてもの救いは「鉄ちゃん」と言わなかったこと。

追いかけて「実は先生」無礼の段を詫びようと思ったが、

まさか、うちの運転手と間違えました、とは言いにくい。

「お前、やっぱり誰かと間違えていないか?」

先生が不審に思って追いかけてきたらどうしよう、

早足で下を向いて、K先生から離れた。

靴を左右別に履くなど、朝飯前じゃござんせんか。

 

あの向かいの女性は、

家に帰ったら家族や、ご主人に、言うのだろうな。

「今日ね、地下鉄で変なおばさんに会ったのよ。サンダルだけど、

違うものを履いてんの。信じられるー。笑っちゃった」

 

帰宅してほっとした。

夫が「ごくろうさま」って台所にいた。

実はさ、あたし、ほら、サンダル別々で一番丁まで行ってたの。

夫が大笑いしてくれたらいいが、

もしかして、

「だいたい、大雑把なんだよ。

事務処理能力ないしな、いっつもそうだろ」

あれやこれやと芋づる式に暴かれ、説教されたら、

赤面の地下道の下向き歩行も、また落ち込みそう。

夫の所見は正解だしね。

ここは、 ひとり、黙って反省した方がよさそうだ。

(今に始まったことではない)

でもいくつになってもちゃんとした人になりたいと思います。

もう間違えないぞ!

REIKO

 

 

 

 

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2012年2月17日 22:08に投稿されたエントリーのページです。

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