« 2008年5月 | メイン | 2008年7月 »

2008年6月 アーカイブ

2008年6月 8日

距離

夏ズボンがない。
中3の息子が言うから
広瀬通りまで地下鉄に乗って買いに行った。
地下道を二人で歩いて
「寄ってこないで、お母さんはオレに寄ってるよ」
「そう」
「お母さんは歩くとオレを押してくるよ。
まっすぐ歩いてよ」
「うん」

「あのさ、私、高校時代にも・・・」思い出を話そうと思ったら

「どっちでもいいけど・・こっちに寄ってこないで」
「うん」

10代・友達によく言われた。
「何で寄るの。押してくるよ。まっすぐに歩いて、玲子」
「うん」
今でも親友と歩くと「変わらないね」にっこりされる。

息子は15歳、母に寄られたら気色悪いのね。
ごめんね・・
まっすぐに歩くから。

そうか、私は連れに寄る癖がある。
だから・・
左の連れなら、右に・・
右に連れがいるなら左に・・

反対・・反対に・・歩けば問題ない・

意識すれば歩ける。
子供に寄らぬよう
意識すればいける。

ふと
気を抜くと
15歳の息子に寄る。

私は直線を歩くのが難しい。
自分はまっすぐに歩いていると思っていても
曲がっていく。

誰かに寄っていく。
足はなんだか好きな方に傾いて
しまいに怒られる。

「そんなに離れなくていいよ。お母さん」
まっすぐ! は難しいから
地下鉄の壁伝いに黙々と歩いていたら
これまた、注意された。

距離感とやら難しい。
好き・好き・好き・・

闇雲に来られたら
子供は困るんでしょうね。
かといって
離れられても・・
あれっ、と
言いますんでしょうね・・

お母さん、俺から離れて・・・

でも、なんかそれって、
かつんと気持ちにあたって
少なくとも・・ちょっと・・
あなたの親ですよ・・寄るな、来るな・・
つまらないこと、言いはしませんが、
15歳でしょうが・・

いっそ、子供の前を歩くことにした。
母であれば、良くも悪くも
あなたの前を行きましょ。
そうすりゃ、寄ってこないで・・
言われない。

黙々前を歩いてみると
意地張っているみたいで・・
やめた。

むしろ、息子の後がいいかも・・
歩幅をゆるくして
後ろにいく。

肩の線、手の長さ、足の長さがよくわかる。
そして、黙々と歩いている。
なんだか15歳は一生懸命に歩いている。

息子が
何を察したか・・

「ごめんなさい。お母さん・・」
「・・・」
改めて、私に言う。
「お願い、お母さん、
オレに寄ってこないで・・・」

そういう
礼を尽くすなら
よろしゅうございます。

希望する距離は
心の距離にも聞こえる。
離れて・お母さん
離れすぎだよ・お母さん

きっとそばにいるのはいいのですね。

いずれ、
私が案じられて・・子供に・・お母さん・大丈夫?
・・私のそばに心配そうに寄って来られて
言われるより
「お母さん、離れて」
その方が
母は大丈夫と思われているのだから
良しとしましょ。

距離は心の距離でもあれば、
成長の跡でもあろうか。
10代は少し、離れてみましょうかね。

夫婦も少し、離れていた方がいいですね。
ひとりをジャマされない距離・・・

さりげない知恵と、
流行り廃れのない、
愛しい人との距離の極意がありました。

つかず離れず。

今北玲子

2008年6月20日

試験前

市内の中学校は23日から
順次、定期試験が始まる。
26日、27日がピーク。
2期になったから、3期より試験の数を減らされて
まさに内申に評点が影響するから、
気が抜けない。
子供たちは事の重大さに気がついていない。

年に中間期末、6回・あったものが4回になる・
中3にとっては年明けの学年末は反映されない。だから、3回だ。
たった3回で内申が決まる怖さがある。
私たちの気持ちとは・・お構いなしに・・
子供たちはのんきだ。

夫は試験前ともなると教室を駆け回る。

塾だから、
点数は1点でも多く取ってもらいたい。

取れないわけじゃないのに
適当に済ませて帰ろうとする子を夫は勘で呼び止める。

「地道にやれよ」
「途中の計算は省くな」

できる子には
「もう1回、やれ」

「ねばれよ」
「基本に戻れ」
「わかった振りするな」

ゲキ飛ばし、
走り回る。

「お前はよくやったな。ごくろうさま。明日も来いな」
ねぎらわれる子もいる。

夫は
やる気のない子、懸命にやっている子、
顔を見てその子のその日のメニューを決める。

できるのに適当な子は喝!

汗だく。

子供の顔を見る、
鉛筆の持ち方を見る、
字の汚さを見て
「自分の字を愛せよ」
夫は
「勉強は粘着力・・粘れ・・わからないところは何度でもやれ・・できるふりするな。
わからないのに格好つけるな。
聞けよ。」

教育関係者というより
現場監督のような・・
子供たちの知識の土台作りの土木監督のようである。
基礎がゆるゆると甘ければ、知識は流れる。

学ぶことにいい加減なことをすると
まともに体当たりされるから・・ぶつかってこられるから
子供たちは怖いのだと思う。

試験前のその教室に
I君、ひとり、
今年3月に逆転満塁ホームラン合格の高1がいる。
連日、試験前で勉強しにきている。
I君に夫は
「もう、帰るのか」
「はい」
「聞きたいことはないのか」
「大丈夫です」

「本当か?」念を押して
去年の中3とは違い、高校生のI君に
「ごくろうさま」と言う。

つい3ヶ月前のI君の喜びはまだ、私に中にも続いていて
会えば嬉しい。
部活で忙しいのに、
試験前だからといって
塾に来て、黙々と勉強する姿は
夫にも私にもすがすがしく、好ましい。

夫は
まじめな
人で・・・
何でもいいとは言わぬ、
適当な勉強、
適当な点数、
いい加減なことはするな。
その一点にこだわり、教室を歩き回り、
「ただいま」
精根尽き果てて帰る人です。

1ヶ月前に卒業生と偶然、北仙台近辺で夫が会って飲んだ。
夫に
「来たら?」
誘われて店に行き、その隣の席に座ったら
卒業生のM君が話し始めた。

「玲子先生、僕は今北先生に
中3の時に、高校入試の前の日、適当にやって
こっそり帰ろうと思って、外に出たら
二階の教室の窓ががらっと開いて、大きな声で、
こらあー
逃げるな!
あの一言、
今もはっきりと覚えています。
あの言葉があるから、今の僕はあるんです。
逃げるな・・
その言葉をいつも思い出して、仕事をしてます。
今も、今北先生の言葉は胸のここに・・
あります。
逃げてばかりだった中学生の僕が逃げずにいます。
飲めて嬉しいです。
やっとそのことを言えて嬉しいです。

言葉は大量にある。
どの言葉を留めるか。

子供たちに伝えたいことは山ほどある。
でも、叶わないこともある。
早く終わればいいと時計を見る子も大勢いる。

M君
夫の言葉があなたに響いたのではなく、
ずっと気がかりな自分と
向き合ったのではないだろうか。
だから、忘れなかったのではないだろうか。
M君!
なんの、礼には及びません。
あなたがその言葉を見つけたのだと思う。

これをお読みの卒業生の皆様、
「先生!丸くなったんじゃないの?」

そうね、
多少は優しくも丸くもなりましたが、
皆さんがご存知の
学ぶことにはしつこく、詰め込んで
高校にも大学に行っても大人になっても困らないように
今も元気に走り回っています。
「そうか・・元気ですか」
はい、現役ばりばり、元気です。

つながっていて下さいね。
これしかできない夫婦です。

卒業生のあなたたちも
ひとたび、社会に出たら
毎日が試験でしょうか。、
毎日、試験前でしょうか。

たまには
適当にね!
疲れないようにね。
今北玲子

2008年6月 9日

その言葉

テレビの討論会でも娯楽のトーク番組でも
政治家や批評家、論客と呼ばれる方々は
対話に埒が明かなくなると
「もっと勉強してくださいよ」とやっつける。
言われた方も負けじと
「そう言いますけどね・・・」
矛先を変えて不勉強じゃないことを
打ち返す。

勉強しなさいよ・・
テレビにでも出るひとかどの方々は
プライドを傷つけれるのだろう。
言う方はぎゅっと追い詰める気で
これを使う。

見ている方は
どちらが不勉強か、なんとなくわかるが、
切り札とばかりに
飛び交うと
ほかに論破できる言葉は持ち合わせないのですか、と思ってしまう。

「勉強しなさいよ」
大人だって言われりゃいやですね。

子供もいやだろうな・

わかっているだけに
子供はぐうの音も出ない。

私もついこれを使ってしまう。
「もっと漢字を勉強しなさいね」
心配で言ってしまう。

でも、この言葉・
意外にいやなものだ。
子供たちは
できるものならとっくに勉強している・・
しないとだめだな・・
わかっている。
でも、できない。

よく勉強しているね・・これは好きです。
漢字一つでも丁寧に書いていたら
その子はよくやっているのだ。

勉強しなさい・

子供たちに
その言葉、言う前に
どうやったら、漢字をよく覚えるか、
どうやったら喜んで、するようなるのか、
『もっと勉強しなさい』
まず、私に言ってみるといいかもしれない。

その言葉・・
自分に向かって言えば、誠に発奮する言葉だ。
今北玲子


About 2008年6月

2008年6月にブログ「北剏舎日記」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2008年5月です。

次のアーカイブは2008年7月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。